4月に公表されるや否や、世界に衝撃を与えた「パナマ文書」。これは、オフショア(外国人や外国企業向けの非居住者向けサービス)やタックスヘイブン(租税回避地)を利用した課税逃れや金融の闇を明るみに出すものとして、注目されている。
以前から、世界では国際的な金融規制と取り締まりが強化されてきており、それは日本においても同様だ。パナマ文書の公表を受けて、今後はさらに厳格化が進むと思われるが、まだ規制が途上の金融機関もある。そのひとつが、ゆうちょ銀行だ。
ゆうちょ銀行は、2007年の郵政民営化によってできた銀行であり、それ以前の「郵便貯金」は日本郵政公社の一事業であった。金融庁の監督下にあるほかの銀行と違い、もともとの監督官庁が総務省であったため、ゆうちょ銀行は金融監督に対する姿勢が甘く、不正口座などの温床になりやすいともいわれている。つまり、郵貯およびゆうちょ銀行は金融の抜け穴となっていたわけだ。
かつての郵貯には、国民が預けたお金を「財政投融資」というかたちで国のインフラ構築などに使ってきた経緯がある。いわば、国が預金者からお金を借りてインフラ整備を行うという仕組みであり、これは日本が貧しい時代のシステムといえる。
そして、07年の郵政民営化を経て、15年11月には日本郵政グループ3社(日本郵政、かんぽ生命、ゆうちょ銀行)が東京証券取引所第1部に株式上場を果たした。17年には、政府保有の株式をすべて売却して完全民営化を目指している。
しかし、ここに大きな問題が生まれつつある。前述したように、メガバンクや信用金庫、第1地銀、第2地銀を含めた銀行は金融庁の担当であり、郵貯は総務省の管轄だった。そのため、郵貯に対しては金融庁の監査が行われてこなかったのだ。
銀行に対しては、金融庁の指導以外にも、国内業務のみは4%以上の自己資本比率、BIS規制(国際業務を行う銀行の自己資本比率に関する国際統一基準)によって、国際業務を行う場合は8%以上の自己資本比率を課されるなど、国内外からさまざまな規制があった。
しかし、その枠組みの外にあったのが郵貯だ。銀行などの金融機関が金融庁や全国銀行協会の指導によって国際的な金融規制への対応を進めてきたのに対して、総務省管轄の郵貯は厳格化されたコンプライアンスなどに関する概念が低かったものと思われる。実質的に政府機関の一部であったこともあり、郵貯には金融監督における甘さが指摘されているのだ。
『パナマ文書:「タックスヘイブン狩り」の衝撃が世界と日本を襲う』 世界中に衝撃を与えている「パナマ文書」。その膨大な取引データの暴露は、個人や企業のみならず、社会や国際情勢を一変させるほどの破壊力がある。パナマ文書の正体から、今後の世界と日本に与える影響までを完全分析!