消費税の負の効果
2つ目の日本経済が直面するリスクは、消費税の負の効果がいまだに継続していることだ。最新の家計調査(7月1日公表)でも2人以上世帯の実質消費は3カ月連続の前年比マイナスであり、昨年も一昨年も2%を超える前年比マイナスであることを勘案すると、民間消費は冷えに冷えまくって氷づけの様相である。
しかし、なぜか日本のマスコミやアベノミクスを批判する勢力からも、消費増税の負の効果が著しいことはめったに指摘されない。まるで消費税の悪影響はステルス型攻撃機のようである。公式統計を素朴に眺めるだけでも、2014年4月以降、実質消費が大幅に落ち込み、そのままL字型で低迷を続けていることは明白である。この2年あまりの間に継続した消費低迷が、日本経済のパフォーマンスをさえないものにしているのは明白な事実だ。
現状では雇用は堅調ではあるが、さらに改善の余地(失業率の2%台への低下、名目賃金の増加、ブラック企業の淘汰など)があるだろう。だが、実際にはこのまま消費低迷を放置しておけば、世界経済の失速リスクとともに日本経済を窮地に追い込むだろう。
最後のリスクは、政策失敗のリスクである。これには今回の参院選によって「改憲勢力」が3分の2に達したことも関係してくる。安倍首相は憲法調査会で改憲の具体的な論点を整理すると表明している。首相の念願が改憲であることを踏まえれば、当然の発言だろう。だが、各種世論調査や出口調査の結果をみれば、国民はアベノミクスの継続には承認を与える一方、改憲に関しては多数が否定的である。また「改憲勢力」といわれる与野党の足並みはバラバラであり、容易にひとつにまとまることはできないだろう。
以上より、安倍首相が改憲により性急に傾斜していくと、国会運営の難航や世論の強い風圧を受けて、政治的失脚の可能性さえある。それは経済政策の実行にとって大きな障害になる。
質が問われる補正予算
また前述した「大胆で包括的な経済政策」だが、補正予算の規模は10兆円程度ではないかといわれている。これは前回14年の消費増税後の補正予算金額5兆円に比べれば、2倍である。だが、問題は金額の多寡よりもその質だ。なぜなら消費増税は恒常的なものであり、補正予算は一回限りのものである。それだけで質的に後者は劣る。さらに世界経済の失速リスクは悪影響の規模も時間の長さも容易に判断しがたい。補正予算の効果は規模だけを拡大しても、かなり制約されてしまうだろう。実際に前回14年の補正予算の効果は事実上、消費低迷に効果なしといってよかった。