本連載前回記事では、「貯蓄がいくらあればいいか」という質問は万人に共通する回答はなく、現在の条件や将来の方向性によって大きく異なる、ということについてお伝えしました。
そうはいっても、「同世代の人はどのくらい貯めているのか」というのは気になるもの。そこで、今回は、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(2015年)」から、30~40代の金融資産保有額(ここでは「貯蓄」と呼びます)の平均値と中央値を年収別に見ていきましょう。まずは「一人暮らし」の数値です。
●30代(左から年収、平均値、中央値/以下同)
・300万円未満……171万円、0万円
・300~500万円未満……406万円、150万円
・500~750万円未満……1013万円、700万円
・750~1000万円未満……3112万円、1945万円
・1000~1200万円未満……1962万円、2155万円
・1200万円以上……620万円、620万円
●40代
・300万円未満……257万円、0万円
・300~500万円未満……702万円、222万円
・500~750万円未満……1221万円、693万円
・750~1000万円未満……3049万円、1380万円
・1000~1200万円未満……7917万円、5250万円
・1200万円以上……8013万円、4125万円
いかがでしょうか。ここで、「平均値と中央値って何?」と思われた方もいるかもしれません。例えば、30代で年収300~500万円未満を見ると、平均値は406万円で中央値は150万円。「いったい、どっちが“普通”なの?」と感じてしまいますよね。正解は「中央値」で、これは“ど真ん中”のことを指しています。
例えば、貯蓄0円の人が9人いて「お金なんてないよね~」と盛り上がっていたとしましょう。そこに、貯蓄1億円の人が1人、輪に入ってきました。この10人の貯蓄平均値は、1億円÷10人=1000万円となります。10人中9人が0円でも、たった1人の1億円に引っ張られて、平均値は1000万円になってしまうのです。
一方、中央値は、数字を小さい順にずらっと並べた時、ちょうど真ん中の値のことです。この10人のケースだと、中央値は0円になります。この中央値のほうが“普通”という実感に近いのではないでしょうか。
このように、平均値は極端に多いか少ない(またはゼロ)の人がいると、それに引っ張られて実感と離れたものになることがあります。そのため、中央値を見ると、「自分の貯蓄は多いのか、少ないのか」というのが、なんとなくイメージできると思います。
ちなみに、年収500~700万円未満の貯蓄を見ると、30代の平均値は1013万円、40代の平均値は1221万円とあって、「1000万円超!」と驚いてしまいそうですが、中央値を見ると30代は700万円、40代は693万円。少しホッとするかもしれません。