高級な鮨店に行くと、たとえば「マグロ」と注文した場合、マグロのさくから鮨用の大きさに切って、すぐに握ってくれます。安い回転寿司店に行くと、新鮮なネタでも事前に切ってあり、輸入しているネタは、現地ですでに鮨用の大きさに加工されて、凍結状態で運ばれてきています。
マグロなどを切っておくと、赤い汁が出てきます。この赤い汁はドリップといって、うまみの元です。高級鮨店で切り立てを使用するのは、うまみが外に出る前にお客の口に入るように考えている結果なのです。
高級しゃぶしゃぶ店でも、お客の注文を受けてから肉をスライスします。肉からのドリップが出る前に、おいしく肉を食べてもらう工夫なのです。
おいしいとんかつを家庭でつくりたいときには、ロース、ヒレなど好みの部位を少し厚めに切ってもらい、筋を切って揚げるととてもおいしくできます。
一部のスーパーマーケットでは、精肉担当者が常駐しておらず、スライスした状態でパックされたものを仕入れて販売しています。豚肉は、スライスしておいしさの源であるドリップが流出してしまうと、スカスカした味になってしまいます。パックの表示を確認し、どこでスライスしたものかを確認して購入することが大切です。
おいしい豚肉というと、「黒豚」を思い浮かべる人も多いと思います。地方に行くと、その土地ごとにさまざまな銘柄の豚肉が売られています。一方で、通信販売などで銘柄豚の鍋セットを購入しても、あまりおいしくないと感じたことがある人も多いのではないでしょうか。おいしくないと感じた肉は、凍結されて運ばれてきていませんでしたか。
おいしい豚肉の一番の条件は、「一度も凍結されていない豚肉」です。チルド(摂氏0度前後の凍結しない程度)の豚肉は、国産だけでなく、アメリカ、カナダ、台湾などからもチルドの状態で輸入されています。おいしいとんかつ店の豚肉は、輸入されたチルド豚肉を使用していることが多いようです。
目の前で加工してもらうのが理想
部位を選ぶことも重要です。クセのない柔らかいヒレ肉、とんかつに最適なロース肉、ショウガ焼きに向く肩ロース、赤身が好きならもも肉、脂身が好きならバラ肉がお勧めです。