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リスク回避下限の「血清アルブミン4.3g/dL以上」という値は、医療現場で用いられる基準に従えば相当に栄養状態が良好と評価される。そもそも臨床基準では、3.8g/dL以上あれば良いことになっている。臨床基準は深刻な負の状態を見つけ出すためのものである。負の健康リスクを可能な限り排除するための健康づくりの手段を特定するためには、臨床基準での解釈は到底使えない。
人生後半の健康問題を取り扱う老化研究が進むに従い、広範な健康リスクを排除するためには相当良好なたんぱく質栄養が必要なことがわかってきた。
今月発表されたノーベル賞医学生理学賞受賞の研究テーマは、オートファジーである。オートファジーは飢餓適応の細胞内システムとも理解できる。過度の食事制限による飢餓状態(栄養失調)の長期化は、オートファジーが備え持つ細胞浄化能力を超えた負の産物の細胞内蓄積を招く。その結果さまざまな疾病の発症と悪化リスクを高め、老化も促進される。
良好な栄養状態を保つことの大切さは、ノーベル賞受賞研究に関連する科学知見からもはっきりわかる。健康科学の中で栄養事象を決して矮小化してはならない。
(文=熊谷修/人間総合科学大学教授)
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