なぜか酉年は、から揚げなどのチキン製品がよく売れるといいます。もともと酉は、西の方角や午後6時ごろを指す言葉です。「トリ」とはいえ、チキンとは関係ないのですが、ファストフードやコンビニエンスストアチェーン各社は、“12年に一度のビジネスチャンスを逃すな”とばかりに、年明けとともに激しい“チキン商戦”を繰り広げています。なかでも熾烈なのが、チキン製品のなかで一番の人気製品である「から揚げ」をめぐる戦いです。
しかし、チキン製品で消費者の頭にすぐに浮かぶのが、2014年7月に発覚し、てんやわんやの大騒動となった、賞味期限切れの中国産鶏肉使用の一件です。
賞味期限切れの腐った鶏肉を使った上海福喜食品のチキン製品は、13年7月から14年7月までに6000トンが中国から日本に輸入され、日本マクドナルドやファミリーマートで販売されていたことが明らかになりました。
その結果、日本マクドナルドの14年8月の売上高は、01年に上場して以来の最大の下落幅となる前年同月比25.1%減となりました。ファミリーマートも該当する商品の販売を中止し、レシート持参者への返金対応を行うなど、大きなダメージを受けました。
厚生労働省は、この事態を受けて、から揚げなどの鶏肉の原産地を消費者に明らかにするようにコンビニ各社に指導しました。その後、ローソンとファミリーマートは、レジ前の鶏のから揚げコーナーに「国産若鶏100%使用」などと大きく表示しています。また、セブン-イレブンは、インターネット上でタイ産(一部中国産)と明らかにしています。他方、中国産鶏肉を使用していることを明らかにしているコンビニチェーンもあります。
もちろん、上海福喜食品製の鶏肉製品は使用していないと思われますが、簡単には安い中国製鶏肉から脱却できないコンビニチェーンは多いのです。
中国の危険な養鶏事情
中国産鶏肉(主にブロイラー)の最大の不安点は、賞味期限切れの腐った肉よりも、抗生物質や抗菌剤など薬剤の残留です。から揚げなどの加工品で輸入すれば、薬剤残留検査はフリーパスです。
中国のブロイラー生産現場での薬漬け飼育は、中国政府も問題視しているほどです。雛の段階から、感染予防のために毎日、飼料に抗生物質のリンコマイシン、さらに成長ホルモン剤を規定の使用量以上与えて飼育しています。こうこうと電灯をつけて夜も眠らせず餌を食べ続けさせ、わずか40日程度で食肉加工場に出荷します。
背景に、中国国内でブロイラーの膨大な需要がある限り、こうした促成の飼育状況は容易に変わらないはずです。
中国政府はこれまで、「中国国内で危険な食品が出回っているのは認めるが、輸出向け食品はまったく別管理で厳しくしている。国内向け食品で問題が起きたからといって、それがそのまま輸出されることはない」と説明してきました。しかし、輸出用の鶏肉は中国国内とは別の環境で飼育しているというのは、とても信じられません。上海福喜食品の一件が、それを明らかにしました。同社は中国国内の最大手鶏肉加工品メーカーですが、国内用も輸出用も同じ飼育環境のブロイラーを使用していたのです。
抗生物質や合成抗菌剤が残留している食品を食べ続けると、体内に薬剤耐性菌が生まれ、万が一病気になったときに抗生物質の薬がまったく効かないということになります。
したがって、中国産から揚げは避けたほうが健康のためです。中国産に限らず、コンビニのから揚げは小さな子どもには食べさせるべきではありません。子どもの将来に悪影響が出るおそれのある食品添加物が使われているからです。
白身の魚肉や抗生物質、抗菌剤漬けの鶏肉をくっつける結着剤として縮合リン酸塩が使われています。この縮合リン酸塩は、多量に摂取すると老化が早まり、腎臓障害を起こすと国際毒科学会で報告されています。また、縮合リン酸塩は、日本大学医学部病院の富田寛元副院長は、味覚障害の原因になると指摘しています。
また、コンビニのから揚げは、もともと栄養分の滅失した粗悪な原料でつくられているので、ナイアシン、リボフラビン、乳酸カルシウムなどの添加物が栄養強化剤として添加されています。乳酸カルシウムは世界保健機関(WHO)から乳児用に使用すべきではないと警鐘を鳴らされている添加物です。せめて、乳酸カルシウムと縮合リン酸塩の使用の有無は明らかにすべきです。
(文=郡司和夫/食品ジャーナリスト)