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江川紹子の「事件ウオッチ」第79回

衆議院で強行採決された共謀罪…「非現実的な説明」に終始した審議の異常ぶり

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金田勝年法務大臣(写真:ロイター/アフロ)

共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織的犯罪処罰法改正案が強行採決された、衆院法務委員会を傍聴した。この段階でも、金田勝年法務大臣らの答弁が、現実とは乖離した世界にどっぷり浸かったままだったのに唖然とした。法案は、衆院本会議の採決を経て参議院での審議に入るが、こんな世界の机上の空論で、現実の捜査機関に強大な捜査権限を与える法律をつくってしまって、本当にいいのだろうか……。

 政府側の説明がいかに非現実的であるか、この日のやりとりから例を挙げる。

(1)いわゆる「一般の方々」問題

 金田法相は、これまでも「一般の方々」について、次のように繰り返してきた。

「組織的犯罪集団とかかわりのない一般の方々、すなわちなんらかの団体に属していない人はもとより、通常の団体に属して、通常の社会生活を送っている方々は、テロ等準備罪の嫌疑が生じることはなく、その捜査の対象ともならない」

「組織的犯罪集団」とのかかわりがあるかどうか、その言動が罪にあたるかどうか、調べてみなければわからないこともある。なんらかの通報や告訴・告発があれば、捜査当局は当然のことながら捜査を行い、容疑の有無を調べることになる。

 ところが、金田法相は告訴があっても、「一般の方々」は捜査対象にはならないと言い張っている。

「告発の内容を慎重に検討し、嫌疑がなければ捜査は行われない。一般の方々に嫌疑が生ずることはない」

 テロの計画が進行中だという告発があれば、たとえ「一般の方々」に見えても、捜査機関は告発内容の真偽を捜査によって確かめるのが当然だ。

 だが、採決が行われた19日の法務委員会では、金田法相はこうも言った。

「一般の方々は、嫌疑があるかどうかの調査の対象にもならない」

 聞いていて、思わず「ひぇ~」と声が出た。捜査機関が、一人ひとりの内心を読み取る特別な能力を備えているとでもいうのだろうか。電話やメールなどの通信を密かに傍受でもしない限り、事情を聞いたり周辺の調査をしなければ判断のしようがない。

 ちなみに、警察庁は何度聞かれても、のらりくらりの答弁でかわし続け、最後まで「一般の方々」が調査や捜査の対象外とは言わなかった。当たり前だ。

(2)司法のチェックがあるから大丈夫!?

 ある集団が「組織的犯罪集団」であるかどうか、ある人がその一員と見なせるかどうか、その人の行為が犯罪計画に基づいた準備行為であるかどうかなどは、まずは捜査機関が判断する。今回の法律が成立すれば、捜査機関は、人の内心を判断する強大な権限を持つことになり、その濫用も懸念されている。

 これに対し、法相は「捜査は一般に適正であるうえ、逮捕や捜索・差押えなどは令状が必要なので裁判所の審査機能が働く。(問題が生じた場合には)国家賠償制度などもあり、権限の濫用を防止できる」と言う。

 しかし、現実には捜査段階の「司法のチェック」はあてにならない。たとえば、最新の司法統計を見ると、令状却下率は、逮捕状で0.06%、捜索差押え等では0.04%しかない。

 なぜ、こんなに低いのか。それは、この時点での裁判官の判断材料は、捜査機関が提出する「疎明資料」しかないからだ。令状が欲しい捜査機関は、当然のことながら、嫌疑や強制捜査の必要があるという資料ばかりを提出する。捜査にとって都合の悪い情報、嫌疑をかけられた側の言い分は、裁判官には届かない。

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