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牧野知弘「ニッポンの不動産の難点」

スラム化する郊外とマンションの「現在」…高齢者と空き住戸だらけで修繕もできず

文=牧野知弘/オラガ総研代表取締役
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スラム化する郊外とマンションの「現在」…高齢者と空き住戸だらけで修繕もできずの画像1「Thinkstock」より

 野村総合研究所の予測では2033年には日本国内の空き家数は2000万戸を超え、空き家率は30%を超えるとされる。一般的には空き家率は30%を超えると急速に治安が悪化し、環境悪化を嫌気した人々が、地域から脱出を始めるといわれている。

 つまり、日本は国全体が30%という「限界値」を超える異常事態になるのだ。ということは、おそらくこの頃には日本の多くの地域社会が崩壊の危機に晒されることになる。そしてこの崩壊は、地方の中山間地域から始まり、都市郊外部、そして都心部へと広く、深く「病が広がる」かのように蝕まれていくことになる。

 首都圏の不動産価格は、アベノミクス効果で全体が上昇しているかのように報道されているが、実態は異なる。実は、首都圏郊外の不動産価値は、急速に下げ足を速めているのだ。首都圏郊外部で育った年齢も若くてバリバリ働ける人たちは、都心部に生活拠点を移し始め、地域に残されるのは高齢者ばかりになっているのが現状だ。

 首都圏でも千葉県や埼玉県の郊外や、船橋や松戸といった中核都市でも駅からバスで行くような、昔「ニュータウン」と呼ばれた住宅地の中古価格は、マンションで「くるま一台分」(250万円から300万円)、戸建てでも1000万円を大きく下回るような「暴落状況」になっている。

 平成バブルの頃はおそらく4000万円から5000万円くらいはしたであろう物件の価値が、10分の1程度にまで縮小しているということだ。 

地域社会との接点が希薄

 残念なことに首都圏郊外のニュータウンと呼ばれた多くの地域は、1970年代以降に開発された新しい街で、地域に根差した文化や伝統といったものは存在しない。住民の多くは、元サラリーマン。家と会社との間を往復するばかりで、地域社会との接点が希薄だった人たちだ。

 家は核家族が中心。祖父母などが同居しているケースは稀で、両親と子供たちだけという二世代だけのものが中心だ。

 地域社会としては、住宅が分譲された同時期に一斉に入居した、ほぼ同じ年代、同じ経済状況の人たちばかりだ。初めのうちは若くて活気があふれていた街も、住民は一斉に歳をとり、街中から子供たちの声は消え、高齢者ばかりのひっそりとした街になる。子供たちはすでに学校を卒業し、都心部の会社に就職し、会社から近くの都心居住を選択している。夫婦共働きが当たり前の現代。子供を保育所に預けて都心まで1時間半以上もかけて通勤するなどという生活スタイルは、そもそも「あり得ない」のだ。

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

オラガ総研代表取締役。金融・経営コンサルティング、不動産運用から証券化まで、幅広いキャリアを持つ。 また、三井ガーデンホテルにおいてホテルの企画・運営にも関わり、経営改善、リノベーション事業、コスト削減等を実践。ホテル事業を不動産運用の一環と位置付け、「不動産の中で最も運用の難しい事業のひとつ」であるホテル事業を、その根本から見直し、複眼的視点でクライアントの悩みに応える。
オラガ総研株式会社

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