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井上組長逮捕事件に神戸山口組系幹部が苦言「ヤクザがサツに被害届なんて出すか!」

文=沖田臥竜/作家
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井上組長逮捕事件に神戸山口組系幹部が苦言「ヤクザがサツに被害届なんて出すか!」の画像1会津小鉄会関連事件で傘下組員が逮捕された任俠団体山口組の織田絆誠代表は、すぐに留置所に足を運んだという。

 

「立場ある人間が自分でサツ(警察)に泣きついたら聞こえが悪いから、我がところの舎弟に被害届け出させとんねん。それを『ワシは関係ない』とは世間様は見いへんで。我がほうが重症やと騒いどってんから。組織名に“仁義”とか付けとるくせに、仁義もクソもないやないか」

 取材に応じてくれた神戸山口組系幹部はこのように吐き捨てた。

 既報の通り【参考記事1参考記事2】、今年1月、京都の名門組織、会津小鉄会の跡目相続に端を発した一連の騒動は、対立関係にあった神戸山口組と六代目山口組をも巻き込んだ乱闘事件が発生した結果、神戸山口組のトップである井上邦雄組長までが逮捕される事態に発展したのである。

 別の事件で大阪刑務所に服役中であった馬場美次六代目会津小鉄会会長(引退)を14日に刑務所から引き戻して逮捕していたが、その馬場六代目会長の携帯電話の発着信履歴をもとに、当局は井上会長の間で共謀関係があったと判断し、逮捕につなげたといわれている。だが、決め手はそれだけではなかった。馬場六代目会長と対立していた原田昇会長が率いる七代目会津小鉄会の二次団体幹部が、神戸山口組組員らから暴行を受けたとして、京都府警に被害届を提出していたのだ。

 冒頭の神戸山口組系幹部は、以下の点に憤っていた。

 ヤクザ同士の喧嘩なのに、ケガを負わされたからといって警察に被害届と出したこと。しかも、自分では被害届を出さずに、子分にそれをやらせたこと。さらに、その人間が所属する七代目会津小鉄会二次団体の名称に「仁義」という言葉が使われていることなどに苦言を呈しているのである。

「やったやられたは、ヤクザなんやろ。返し(報復)をたくらむのやったらようわかる。それを被害届出すて……。それやったら、ヤクザ辞めたらどないや思うわな」(前出の神戸山口組系幹部)

当局は公判維持の自信あり

 今回の井上組長ら幹部の逮捕容疑は、暴力行為処罰法違反と傷害罪である。この事案は親告罪ではない。そのために警察当局が事件を掴んだ場合、被害届の有無に関係なく摘発することが可能だが、昨今ヤクザ同士の傷害事件は、被害届が出されるという傾向がますます強まっている。

 当サイトでも指摘の通り、警察当局の捜査のきっかけは、七代目会津小鉄会の幹部組員が神戸山口組系組員に暴行を受けたと訴え出る場面がテレビで流されたことだった。その上に被害届まで出され、馬場六代目会長と井上組長との発着信履歴まで確認できたことで、井上組長逮捕への動きが加速したようだ。

「当初は“逮捕ありき”の無理筋な事件との疑念をもっていたが、当局も自信があるのだろう。井上組長はすでに検察庁に身柄を送られているが、井上組長の供述がどう転ぼうとも、関係者の証言や証拠で検察も公判を維持できると考えて、起訴してもおかしくない。逮捕容疑の傷害罪と暴力行為処罰法の集団暴行罪に認定するのではないか」

これはある法曹関係者の個人的な見解なので、今後の展開は当局の捜査と判断を待つしかないが、この事件では、そのほか複数の神戸山口組系組員のみならず、カメラ前で被害を訴えた幹部組員すら逮捕されるという情報もあり、大型事件に発展しそうな気配だ。

織田代表が示した姿勢

 6月17日現在、警察発表によれば、会津小鉄会本部での乱闘事件にかかわる傷害等の事件で逮捕されたのは、井上組長をはじめ6名。今後も順次、関係者を逮捕する方針を京都府警は固めているといわれているが、6名のうち神戸山口組関係が井上組長と同組系幹部1名、会津小鉄会関係が馬場六代目会長と同会幹部の1名。残り2人は、現在は神戸山口組から割って出ている任俠団体山口組系幹部となる。

 この2人の幹部は13日に逮捕されているが、その幹部らが留置されている警察署に、任俠団体山口組の織田絆誠代表自ら足を運び、差し入れをして帰ったという話が伝わっている。著者の感覚からしても、本格的な取り調べも始まっていない段階で、一次団体組織のトップが、いくら幹部のためとはいえ、自ら差し入れへと留置所に向かうことは相当珍しいと思う。

 だが、織田代表は、そうした気遣いをすぐに示せる人物だ。それが織田代表の人柄でもあり、トップとしての強みといえるのではないだろうか。著者が知る限り、神戸山口組時代にもそういった心配りを示していた。現在服役中の傘下組織の某会長のもとにも、拘置所まで面会へと訪れた際には「帰りを待っている」という力強い言葉を残している。

 任俠団体山口組結成という事の是非については、著者などには雲の上の話なので判断しようがない。だが、こういった一面が織田代表にはあるからこその求心力が発揮され、数的には圧倒的な不利の中、任俠団体山口組という第三極が発足しえたといえるかもしれない。服役中の人間にとって、社会からの声や差し入れは何よりの励みとなる。織田代表は身をもってそれを経験しているからこそ、今回のようなことが起こった時も、いち早い心配りを実践しているのだろう。

 警察当局が狙う山口組の弱体化。井上組長逮捕はその第一歩となるのだろうか。

(文=沖田臥竜/作家)

●沖田臥竜(おきた・がりょう)
2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、『山口組分裂「六神抗」』365日の全内幕』(宝島社)などに寄稿。以降、テレビ、雑誌などで、山口組関連や反社会的勢力が関係したニュースなどのコメンテーターとして解説することも多い。著書に『生野が生んだスーパースター 文政』『2年目の再分裂 「任侠団体山口組」の野望』(共にサイゾー)など。最新刊は、元山口組顧問弁護士・山之内幸夫氏との共著『山口組の「光と影」』(サイゾー)。

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