安倍晋三首相が8月上旬に行う予定の内閣改造では、稲田朋美防衛大臣の交代は必至とされている。
稲田氏については、これまでいくつかの疑問が投げかけられていた。
(1)稲田氏は終戦記念日に靖国神社を参拝するのを常としてきていたが、防衛大臣になってどうするかが着目されていた。そのなかで2016年8月15日、突然、海賊対処活動などのため自衛隊が駐屯しているアフリカ東部のジブチを訪問した。これは靖国問題への説明を避けたのではないかとみなされた。
(2)17年2月、マティス米国国防長官が来日した時、稲田氏は十分な防衛論議ができなかったのでないかという疑問が持たれた。
(3)森友学園問題では、稲田氏は森友学園の顧問弁護人だったことはないと発言していた。しかし、森友学園の民事訴訟に原告側代理人弁護士として出廷したことが明らかになった。
(4)東京都議選中の6月27日、板橋区で自民党候補を応援する集会で「防衛省・自衛隊、防衛相、自民党としても、お願いしたいと思っているところだ」と訴えた。これは国家公務員法などに抵触するのでないかと批判された。
そして今また、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣された陸上自衛隊部隊の日報問題への対応をめぐり、20日付朝日新聞社説で、「来月の内閣改造で稲田氏を交代させればいい。首相がもしそう考えているなら、甘すぎる」と論ずるまでに至っている。まず、今回の事態の概要をみてみたい。
「日報」問題の経緯
南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣されていた陸上自衛隊部隊が作成した日報が、「廃棄した」とされた後も陸自内で保管されていた問題で、陸自内の文書の存在について対応を協議した省内の幹部会議に、稲田氏が出席していたことがわかった。複数の政府関係者が明らかにしたという。
政府関係者によると、この会議は2月中旬に開かれ、稲田氏のほか、黒江哲郎事務次官や陸自幹部らが出席。情報公開請求に「廃棄した」としていた昨年7月の日報が陸自内に電子データとして保管されていたことが判明したため、その事実を公表するかが協議された。会議では、陸自に残っていた電子データについて「隊員個人が収集したデータであり、陸自の公文書ではない」との認識を共有。最終的に陸自に保管されていた事実は公表しないことが決まったという。
稲田氏は3月の衆院安全保障委員会で、陸自内でデータが見つかったという報告を受けていたかどうかを民進党議員から問われ、「報告を受けなかった」と答弁している。稲田氏は19日、「隠蔽を了承したとか、非公表を了承したとかいう事実は、まったくありません」とコメントしている。