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米山秀隆「不動産の真実」

人口増加で広がった「まち」、日本中で維持困難に…「ぎゅっと縮める」動き広がる

文=米山秀隆/富士通総研経済研究所主席研究員
人口増加で広がった「まち」、日本中で維持困難に…「ぎゅっと縮める」動き広がるの画像1「Thinkstock」より

まちのコンパクト化の必要性

 人口減少時代において、まち(市街地)をたたんでいく必要性が高まっている。人口増加時代にまちが大きく広がったケースでは、その後の人口減少により空き家や空き地が増え、まち全体の維持が難しくなっているケースは少なくない。まちが郊外に広がる過程では、中心市街地の空洞化が進んでいる場合も多く、コンパクトシティ化は中心市街地活性化政策とも密接にリンクする。

 コンパクトシティ化の必要性が主張される場合、主な理由は次の3つである。第一は、高齢社会において日常の買い物や通院のために自分で車を運転しなければ用を足せないまちは、暮らしにくいことである。第二に、人口減少が進んでいくなかでは、薄く広く拡散したまちの公共施設やインフラを、すべて維持することは財政的に困難ということである。第三は、地方においては税収に占める固定資産税の割合が高いが、中心市街地が空洞化してその価値が下がると、固定資産税収が維持できず、財政に悪影響が及ぶことである。

 一般には、第一の理由が強調されることが多いように見受けられるが、自治体にとっては財政上の第二、第三の理由がより切実である。

進む立地適正化計画の策定

 これまでコンパクトシティ政策は、中心市街地活性化法の枠組みで行われることが多かった。しかし、成功事例として取り上げられるのは富山市くらいで、十分な成果が上がったとはいえない。

 そこで、新たなコンパクトシティ化の枠組みとして、都市再生特別措置法により「立地適正化計画」の仕組みが導入された(14年8月)。立地適正化計画は、住宅と都市機能施設の立地を誘導することで、コンパクトなまちづくりを目指すものである。策定する動きは急速に広がり、17年7月末時点で348都市が立地適正化計画に取り組んでおり、うち112都市が計画を策定・公表した(国土交通省調べ)。

 立地適正化計画では、住宅を集める「居住誘導区域」と、その内部に商業施設や医療施設、福祉施設などの立地を集める「都市機能誘導区域」が設定される。居住誘導区域外では、例えば3戸以上の住宅開発には届出が必要になり、開発が抑制される。

米山秀隆/住宅・土地アナリスト

米山秀隆/住宅・土地アナリスト

1986年筑波大学第三学群社会工学類卒業。1989年同大学大学院経営・政策科学研究科修了。野村総合研究所、富士総合研究所、富士通総研等の研究員を歴任。2016~2017年総務省統計局「住宅・土地統計調査に関する研究会」メンバー。専門は住宅・土地政策、日本経済。主な著書に、『世界の空き家対策』(編著、学芸出版社、2018年)、『捨てられる土地と家』(ウェッジ、2018年)、『縮小まちづくり』(時事通信社、2018年)、『空き家対策の実務』(共編著、有斐閣、2016年)、『限界マンション』(日本経済新聞出版社、2015年)、『空き家急増の真実』(日本経済新聞出版社、2012年)など。
米山秀隆オフィシャルサイト

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