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また、これら事例は、新たに整備する公共交通として、バスを重視するか(岐阜市、毛呂山町)、LRTを重視するか(富山市、宇都宮市)、それ以外か(JR廃線後はデマンド交通重視の夕張市)に分けることができる。LRTを重視する場合、既存鉄軌道を活用するか(富山市)、全区間新設するか(宇都宮市)の違いがある。
公共交通として何を選択するかは、地域の状況によって異なる。富山市の場合は、恵まれた鉄軌道のストックを活用した。岐阜市は路面電車が廃止された上、鉄道は市外との交通手段に過ぎないため、バスネットワークを充実させるしか方法がなかった。宇都宮市では南北軸の鉄道はあるが東西軸がないため、LRTの新設で補おうとしている。毛呂山町は旧市街地の人口維持で既存の鉄道路線を保つとともに、ニュータウンと鉄道駅を結ぶバス整備に注力しようとしている。このように、コンパクト化を進めていく前提としては、公共交通の整備が重要になる。
一方、居住誘導区域の設定は、客観的な基準に基づくのがわかりやすい。例えば富山市では、中心市街地と、鉄軌道駅半径500m以内およびバス停半径300m以内の地域としている。現状出ている112都市の立地適正化計画のうち、都市機能誘導区域、居住誘導区域ともに設定しているものは66都市(59%)にすぎない。居住誘導区域の設定は、地権者の利害に直結するため、設定を先送りしている場合も多い。居住誘導区域からはずれると、その土地の価値は下がっていかざるを得ないからである。
それでも自治体は、将来の財政状況を考えると、いずれは居住誘導区域の設定を迫られる可能性が高い。自治体にとっては、財政破綻後に否応なくコンパクト化を迫られるか、それとも、その前の段階でコンパクト化に踏み切ることができるかという選択の問題になりつつある。
(文=米山秀隆/富士通総研経済研究所主席研究員)
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