コンパクトシティ政策の事例
まちのコンパクト化に対する取り組みは、その契機や進捗度合いによって、およそ3つに分類することができる。
第一は、財政破綻で否応なくコンパクトシティ化に踏み切らざるを得なくなったケースである。夕張市がそれで、住宅の多くを占める公営住宅(旧炭鉱住宅)の集約というかたちでまちのコンパクト化を進めている。中心市街地活性化計画や立地適正化計画によるものではなく、破綻後の取り組みという特殊なケースであるが、目指す方向は同じである。
第二は、将来への危機感からいち早くコンパクト化を進め、一定の成果を出しているケースである。前述の富山市がそれに当たる。富山市の場合は、既存の鉄軌道を利用してLRT(次世代型路面電車)を整備するとともに、中心市街地や公共交通沿線に移り住むインセンティブを設け、近年は中心市街地の人口増加、地価回復という成果が明確になってきた。
岐阜市は公共交通の整備を先行させてきた。路面電車が廃止された後、BRT(バス高速輸送システム)やコミュニティバスなど、バスを中心とする公共交通ネットワークの構築を進め、今はまちの集約を進めている。
第三は、将来への危機感から取り組み始めたが、まだこれからというケースである。その一例には、LRTを導入しようとしている宇都宮市がある。富山市と異なるのは、既存の鉄軌道を活用するのではなく、全区間新設という点である。それだけに財政的負担が大きく、また、期待通りの成果が発揮されるのかの見極めが難しいものとなっている。
埼玉県入間郡毛呂山町もこれから進めようとしている。毛呂山町の立地適正化計画は、空き家率や地価上昇率の目標値を設定している点がユニークである。空き家対策とリンクさせ、また、地価上昇によって固定資産税の税収維持を図ろうとしている。町村で最初に立地適正化計画を策定したのは毛呂山町であり、それだけ危機感が強いことを示している。
公共交通の選択肢
これら事例のうち、将来の衰退に対する危機感が特に強い例は、夕張市、毛呂山町である。富山市、岐阜市、宇都宮市はそれほどの危機感があるわけではないが、薄く広がったまちを維持できなくなるという問題意識が強い、地方の大都市という共通点を持つ。