ビジネスジャーナル > マネーニュース > 市街地、日本中で維持困難に  > 2ページ目
NEW
米山秀隆「不動産の真実」

人口増加で広がった「まち」、日本中で維持困難に…「ぎゅっと縮める」動き広がる

文=米山秀隆/富士通総研経済研究所主席研究員

コンパクトシティ政策の事例

 
 まちのコンパクト化に対する取り組みは、その契機や進捗度合いによって、およそ3つに分類することができる。

 第一は、財政破綻で否応なくコンパクトシティ化に踏み切らざるを得なくなったケースである。夕張市がそれで、住宅の多くを占める公営住宅(旧炭鉱住宅)の集約というかたちでまちのコンパクト化を進めている。中心市街地活性化計画や立地適正化計画によるものではなく、破綻後の取り組みという特殊なケースであるが、目指す方向は同じである。

 第二は、将来への危機感からいち早くコンパクト化を進め、一定の成果を出しているケースである。前述の富山市がそれに当たる。富山市の場合は、既存の鉄軌道を利用してLRT(次世代型路面電車)を整備するとともに、中心市街地や公共交通沿線に移り住むインセンティブを設け、近年は中心市街地の人口増加、地価回復という成果が明確になってきた。

 岐阜市は公共交通の整備を先行させてきた。路面電車が廃止された後、BRT(バス高速輸送システム)やコミュニティバスなど、バスを中心とする公共交通ネットワークの構築を進め、今はまちの集約を進めている。

 第三は、将来への危機感から取り組み始めたが、まだこれからというケースである。その一例には、LRTを導入しようとしている宇都宮市がある。富山市と異なるのは、既存の鉄軌道を活用するのではなく、全区間新設という点である。それだけに財政的負担が大きく、また、期待通りの成果が発揮されるのかの見極めが難しいものとなっている。

 埼玉県入間郡毛呂山町もこれから進めようとしている。毛呂山町の立地適正化計画は、空き家率や地価上昇率の目標値を設定している点がユニークである。空き家対策とリンクさせ、また、地価上昇によって固定資産税の税収維持を図ろうとしている。町村で最初に立地適正化計画を策定したのは毛呂山町であり、それだけ危機感が強いことを示している。

公共交通の選択肢

 これら事例のうち、将来の衰退に対する危機感が特に強い例は、夕張市、毛呂山町である。富山市、岐阜市、宇都宮市はそれほどの危機感があるわけではないが、薄く広がったまちを維持できなくなるという問題意識が強い、地方の大都市という共通点を持つ。

米山秀隆/住宅・土地アナリスト

米山秀隆/住宅・土地アナリスト

1986年筑波大学第三学群社会工学類卒業。1989年同大学大学院経営・政策科学研究科修了。野村総合研究所、富士総合研究所、富士通総研等の研究員を歴任。2016~2017年総務省統計局「住宅・土地統計調査に関する研究会」メンバー。専門は住宅・土地政策、日本経済。主な著書に、『世界の空き家対策』(編著、学芸出版社、2018年)、『捨てられる土地と家』(ウェッジ、2018年)、『縮小まちづくり』(時事通信社、2018年)、『空き家対策の実務』(共編著、有斐閣、2016年)、『限界マンション』(日本経済新聞出版社、2015年)、『空き家急増の真実』(日本経済新聞出版社、2012年)など。
米山秀隆オフィシャルサイト

人口増加で広がった「まち」、日本中で維持困難に…「ぎゅっと縮める」動き広がるのページです。ビジネスジャーナルは、マネー、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!