北朝鮮、欧米ら世界350社と合弁事業展開…米国は裏交渉、すでに北朝鮮でビジネス進出
北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長による「グアムへの弾道ミサイル発射も辞さない」という脅しに、世界が釘付けになった。アメリカのトランプ大統領も、北朝鮮に対し「かつてないような炎と怒りをぶつける」「臨戦態勢にある」など強硬姿勢で応じた。いわば、双方とも「言葉のミサイル」をぶつけ合ったようなものだ。その都度、内外の株価は上下した。
結果的には、金委員長が「アメリカの行動をもう少し見守る」と発言し、発射を控えたため、トランプ大統領も「金正恩は非常に賢明で、筋の通った選択をした」と態度を一変。当面、戦争の危機は避けられたようだ。そもそも、アメリカ軍は北朝鮮と戦争に臨むような準備をまったくしていなかった。8月21日からの米韓合同軍事演習に関しても、これは以前から予定されていたもの。北朝鮮のグアム攻撃発言に対応したものではない。
その意味では、トランプ大統領による「臨戦態勢」発言は口先だけの実体の伴わないものであった。第一、米空母のカール・ビンソンもロナルド・レーガンも6月に朝鮮半島近海から退去したままだ。要は、アメリカも北朝鮮も本音では戦争を望んでいないのである。
では、「戦争も辞さない」とする過激な発言を双方が繰り返した背景はなんなのか。この点を押さえておかなければ、米朝関係の表面的な対立志向に翻弄されるだけで終わってしまう。実は、北朝鮮の核ミサイル開発によって一番得をしているのは誰か、ということを冷静に判断する必要がある。
その答えは、北朝鮮である。アメリカへの抑止力を確保した上で、韓国や中国に対しても強い立場で交渉できるカードを手に入れたといえるからだ。
THAADの意義
北朝鮮のミサイルの脅威に対応するため、アメリカは韓国にTHAADと呼ばれる高高度の迎撃ミサイルシステムを配備したが、今回の米朝間の応酬を経て、さらに追加配備が計画されることになった。この迎撃ミサイルシステムは、北朝鮮のミサイルにはまったく無力であることは軍事関係者の間では周知の事実であるにもかかわらずである。
では、なぜ配備が進んでいるかといえば、中国国内の軍事的動きを把握する強力なレーダー機能がある上に、中国からのミサイルを打ち落とすことが可能となるからだ。アメリカは北朝鮮ではなく、中国の将来的な脅威に対応する目的でTHAADの配備を進めているわけだ。しかし、表向きは「金正恩が何をするかわからないため」と、北朝鮮をTHAAD配備の言い訳に利用しているにすぎない。もちろん、アメリカの軍需産業にとっては実においしい話であり、トランプ政権万々歳である。日本もアメリカから新たに防衛ミサイルシステムを購入することになった。