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「吉崎誠二のデータで読み解く 住宅・不動産市況の裏側」

賃貸住宅市場、突然にマイナス突入で急失速…アパート建築過剰が深刻化か

文=吉崎誠二/不動産エコノミスト、社団法人住宅・不動産総合研究所理事長
賃貸住宅市場、突然にマイナス突入で急失速…アパート建築過剰が深刻化かの画像1「Thinkstock」より

 前年同月比マイナス3.7%。

 8月31日に発表された、2017年7月の住宅着工戸数(貸家分類)の数字です。12年以降続いてきた賃貸住宅建設の伸びにブレーキがかかってきたようです。

賃貸住宅市場、突然にマイナス突入で急失速…アパート建築過剰が深刻化かの画像2

 図1は16年以降のデータですが、貸家(賃貸住宅)の前年同月比はずっとプラスが続いていました。しかし、ここにきて6月、7月(=最新月データ)ともマイナスという状況です。

 国土交通省が毎月発表する住宅着工戸数は総計、持家、貸家、分譲住宅などのカテゴリー別に公表されていますが、このうち主に賃貸住宅である貸家カテゴリーの数字にここ数カ月異変が見られます。

賃貸住宅市場、突然にマイナス突入で急失速…アパート建築過剰が深刻化かの画像3

 その背景等は、このあと詳しく述べていきますが、賃貸住宅市場(アパート市場)に陰りが見え始めてきたようです。

12年以降、活況だった賃貸住宅市場

 図3は12年以降の住宅着工数の推移を示しています。

賃貸住宅市場、突然にマイナス突入で急失速…アパート建築過剰が深刻化かの画像4

 表は、住宅着工戸数で多数を占める3分類と総計を記載しています。ここでいう持家は「建築主が自分で居住する目的で建築するもの」、貸家は「建築主が賃貸する目的で建築するもの」、分譲住宅は「建て売り又は分譲の目的で建築するもの」ということになります。

 図3を見ると、貸家(賃貸住宅)は唯一5年連続のプラス、その伸びが住宅着工戸数増加を牽引してきた様子が伺えます。

近年の賃貸住宅市場の推移と伸びてきた背景

 私は、年間に30回くらい新聞社などのメディアが主催する不動産関連のセミナーで講演させていただいていますが、12年頃からその数は急に増えました。また、新聞の下段の広告欄でも13年頃からセミナーの告知が増えてきたイメージがあります。ハウスメーカーやアパート専業メーカーがスポンサーについて、「土地活用としての賃貸住宅建築」のような内容が多く見られました。こうした講演会は、東京・大阪・名古屋といった大都市だけでなく、地方都市での開催も多く見られます。しかし、最近では土地活用ネタの講演はすっかり減り、昨今増えている不動産関連の講演内容は「不動産投資」、とくに「ワンルーム投資」に関することが多いようです。

吉崎誠二/不動産エコノミスト、社団法人住宅・不動産総合研究所理事長

吉崎誠二/不動産エコノミスト、社団法人住宅・不動産総合研究所理事長

1971年6月30日生まれ。
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学博士前期課程修了。
主な業務
・不動産・住宅などに関するデータ分析
・解析等のシンクタンク業務
・不動産・住宅関連企業向けコンサルティング業務
・企業の不動産(CRE)に関するコンサルティング業務
・住宅・不動産関連のオウンドメディアサイトの監修業務
・上記に関する原稿執筆、講演など
社団法人住宅・不動産総合研究所

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