9月28日に召集される臨時国会の冒頭で安倍晋三首相が衆議院の解散を宣言、10月22日に総選挙の投開票――。
突如として、このような観測が流れた。一連の報道を見る限り、ほぼ既定路線のようだ。野党などからは「森友学園や加計学園の疑惑追及から逃れる手だ」「北朝鮮の脅威が高まるなか、無責任では」との声も聞かれるが、経済評論家の渡邉哲也氏は「今後の政治日程を考えれば、今しかない」という見方を示す。
「衆院議員の任期は残り約1年3カ月。任期満了が近づくにつれて解散のカードは効力が弱まるため、来秋あたりがタイムリミットだった。しかし、年明けの1~3月は予算編成があるため解散はできない。さらに、北朝鮮情勢は悪化することはあっても改善する見込みは小さく、核弾頭を搭載したICBM(大陸間弾道ミサイル)が完成するとされる来年のほうが危険度は高まる。
そのため、『今か来春』というのがひとつの選択肢であった。もともと10月22日には衆院の補欠選挙が予定されていたため、吸収することもできる。そうした事情を踏まえた合理的選択といえる」(渡邉氏)
現在、安倍首相は国際連合の総会に出席するため渡米しており、現地でアメリカのドナルド・トランプ大統領や韓国の文在寅大統領と会談を行う予定だ。解散総選挙については「(9月22日の)帰国後に判断したい」としている。
「北朝鮮情勢などについてアメリカと協議した上で、安倍首相が最終的な決断を下すことになるだろう。トランプ大統領は11月初旬に初の来日を予定している。これは、つまり『北朝鮮の突発的な暴発がない限り、11月初旬まで軍事オプションの行使はない』という判断の裏返しだ。それなら、決断は早いほうがいい。また、日本としてはトランプ大統領の来日までに政治的に落ち着いて体制を整えておきたい。10月22日総選挙であれば、そうした事情もクリアできる」(同)
解散総選挙で注目される“小池新党”のゆくえ
解散総選挙となれば、注目されるのが“小池新党”のゆくえだ。東京都の小池百合子知事の側近として知られる若狭勝議員と民進党を離党した細野豪志議員が新党結成を模索しており、9月28日までに新党が結成されることが濃厚だ。また、東京の全選挙区に候補者を擁立する意向を示している。
しかし、渡邉氏は「現時点では、選挙を戦うための土台ができていないと言わざるを得ない」と語る。
「政党交付金が交付される基準日は1月1日のため、まだ国から党を運営するための資金を得ることはできない。そのため、仮に新党が結成されたとして、現職の議員にとって欲しいのはお金を持ってきてくれる便利な候補者だろう。よく第三極の政党が採る手法だが、とにかく候補者を集めることでお金を集め、擁立することで有権者に党の存在をアピールする。
しかし、比例代表の名簿順位が同じ場合は小選挙区の惜敗率で当選が決まるため、あまりがんばってもらっては困る。あくまでお金と宣伝が目的で、現職の議員の養分になる“養分候補”というわけだ。新党としては、勝てないけれどお金を持ってきてくれる候補者を集めたいというのが本音だろう」(同)