北朝鮮の動向が世界の耳目を集めている。今年に入って弾道ミサイルの発射回数は格段に増え、9月3日には過去最大規模の核実験を強行した。アメリカとの舌戦もヒートアップし、ついに「宣戦布告」という言葉まで飛び出している。
一方で、国際連合の安全保障理事会は初めて原油の輸出制限に踏み切るなど、追加の制裁決議を全会一致で採択した。これは、戦前の日本と似た状況だ。1930年代後半から、日本はアメリカ、イギリス、中国、オランダによる貿易制限によって石油やガスなどの資源供給が止められた。いわゆる「ABCD包囲網」であり、追い詰められた日本は戦争を仕掛けざるを得ない状況を迎えてしまったのだ。
まさに「戦争前夜」の様相を呈してきた北朝鮮情勢だが、今回は少し違った角度から、この問題を見ていきたい。
9月28日に発売される共著『ヤクザとオイルマネー 石油で250億円稼いだ元経済ヤクザが手口を明かす』(徳間書店)の共著者である猫組長氏は、北朝鮮がミサイル発射を続ける理由について「大きく2つ。アメリカとの直接交渉を引き出すこと、ミサイルの発射実験が最高のショーケースになっていること」という見方を示している。
猫組長氏は、不動産会社や投資会社を経て暴力団の世界に入り、山口組系組長を経験。現在は引退しているが、金融や経済の裏事情に精通している人物だ。
北朝鮮のミサイル開発を仕切るロシアのマフィア
「アメリカとの直接交渉」については、巷間言われるように、金正恩朝鮮労働党委員長はアメリカに自国を核保有国として認めさせたい。そのため、ミサイル発射を繰り返して自国の力を誇示し続けているわけだ。
一方、「ミサイル発射がショーケースになっている」については、こんな裏事情がある。たとえば、7月に二度発射した大陸間弾道ミサイル(ICBM)は、いわば北朝鮮製兵器のフラッグシップモデルだ。スマートフォンやパソコンと同じで、消費者はフラッグシップモデルの性能を見て「ほかの兵器の性能もいいに違いない」と購買意欲が湧く。
北朝鮮にとって都合がいいのは、1回発射すれば世界中で報道され、さらに各国の調査機関が性能を割り出してくれることだ。自国の製品を世界が全力で宣伝してくれるわけで、その経済効果は大きい。
ちなみに、ロシアの北朝鮮への石油製品(ガソリンやディーゼル燃料など)の輸出(1~6月)は前年比で倍増していることが、ロシアの税関当局の資料で明らかになっている。ロシアの裏社会を仕切っているのはマフィアだ。これらの事情に鑑みると、北朝鮮製の兵器はロシアン・マフィアを通じて海外の“顧客”に流れているのだろう。
『ヤクザとオイルマネー 石油で250億円稼いだ元経済ヤクザが手口を明かす』 黒い水を求めてブラック・マネーが燃え上がる!――石油を買い漁る中国にヤクザが群がった。単身オイルを求めてわずか1年で250億円を稼いだ男はアメリカに狙われ、パレルモ条約で拘束された。朝鮮半島危機から9・12任侠山口組射殺事件にまで連なる、エネルギー・麻薬・武器取引・犯罪組織・「ドル」の連鎖をすべて明かす――経済評論家・渡邉哲也と評論家・猫組長のコンビが石油・ドル・武器・麻薬・犯罪組織の連鎖をあぶり出す!