今、もっとも注目されるサービスに「シェアリングエコノミー」がある。簡単にいえば、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などのソーシャルメディアを活用した新たな経済で、遊休資産や個人のスキルといった無形資産のシェアを仲介するサービスだ。
近年、若者の間で人気を集める「ソーシャルアパートメント(SA)」もそのひとつと目されているサービスで、うたい文句は“SNSのリアル版”。「シェアハウスにはないライフスタイル」を提案するSAは、従来のマンションのようなプライベート空間に加えて、ラウンジなどの共用スペースが充実している点が特徴だ。そのため、住人間のコミュニケーションがより活発化するとされている。
SNS上だけではなく、現実の生活でも他人とつながっていたい……という人向けのコミュニティのようだが、なぜこのようなサービスが登場したのだろうか。そもそも、なぜそこまでして他人とつながっていたいのか。
平均年齢27.6歳…若者が集う宮前平のSA
SAは、完全個室によってプライバシーは守られつつ、多彩な共用スペースで入居者同士のコミュニケーションを楽しむことができる。また、一般的なシェアハウスと比べて物件の規模が大きく、プライバシー保護に力を入れている点で差別化されている。そのため、入居者は「1人暮らしでありながら、通常の1人暮らしでは難しい豪華なラウンジを使える」といったメリットを享受することができるわけだ。
たとえば、東急田園都市線宮前平駅から徒歩7分の場所にある「ネイバーズ宮前平」は社員寮をリノベーションしたSAで、ラウンジやキッチン、コワーキングスペースなどの共用スペースを持つ。運営するグローバルエージェンツの吉田主恵さんによると、現在84人が生活しているという。
「住人同士のコミュニケーションの活発さが特徴です。ラウンジなどで日常的に他人と交流を持てる暮らしは、まさに“SNSのリアル版”といえます。他人と同居しながらも、プライベートな生活はちゃんと保たれている。その点に魅力を感じる人が多いようです」(吉田さん)
SAの部屋にはさまざまなタイプがあり、水回りは共用の1BRから1K、1LDK、さらにバス・トイレ・洗面台の3点ユニットやキッチンを備えた個室も用意されている。アパートの立地や間取りによって差はあるが、家賃も月4万~10万円代と幅広い。
そして、最大の特徴は住人たちの年齢層だ。「ネイバーズ宮前平」の場合、平均年齢は27.6歳。1980年以降に生まれた“ミレニアル世代”が中心だという。
「SAが誕生したのは2005年。当時は、ミクシィやフェイスブックなどのSNSが若者に普及し始めた時期でした。その後、SNSの発達に伴い、“SNSのような暮らし方”が若者たちに広く受け入れられ、蒲田の17戸から始まったSAは、今や都内を中心に全国36棟に増えています」(同)
“家族”と“個”の中間を求める若者たち
しかし、「SNSのような暮らし」といわれても、ミレニアル世代より上の団塊ジュニア世代などには、「その魅力がわからない」という人もいるに違いない。