花粉症とかぜは何が違うのか?
花粉症が本格的な季節になりました。この時期にクリニックで聞かれることが多い質問のひとつが、「今の症状がかぜなのか花粉症なのか、わからない」というものです。
花粉症というのはスギなどの花粉を原因として起こるアレルギー性鼻炎と結膜炎のことです。一方、かぜというのはライノウイルスなどのかぜウイルスによるウイルス感染症ですから、両者は基本的にはまったく別の病気です。
しかし、どちらの病気も、鼻水や鼻づまり、のどや頭の痛みなどの症状が出る、という点は同じです。花粉症は熱が少なく、かぜの結膜炎は少ない、というような違いはありますが、花粉症でも熱が出ることはありますし、結膜炎を伴うようなかぜもあります。それ以上にややこしいのは、両方の病気が同時に起こることがあるからです。
花粉症の人がかぜをひけば、鼻づまりや鼻水などの症状は、より強くなることが通常ですし、かぜの人が花粉症になると、熱や関節痛などの症状がつらい上に、鼻水や鼻づまりも悪化するので、こちらも最悪な状況となるのです。
ここでひとつの疑問は、花粉症とかぜのかかりやすさとの間に、関係はないのだろうか、ということです。花粉症になるとかぜをひきやすい、ということはあるのでしょうか。
花粉症ではかぜをひきやすいのか?
花粉症の患者さんがかぜをひきやすいかどうかは、あまりしっかりしたデータはないようです。ただ、同じアレルギーの病気であるアトピー性皮膚炎では、かぜにかかりやすいというデータが報告されています。これもアレルギーの炎症が気管支という場所に起こる、気管支喘息という病気では、ウイルス感染によって、急性増悪という病状の急激な悪化が起こりやすいこともわかっています。こうした報告からは、アレルギーの炎症が鼻の粘膜に起こる花粉症も、かぜにかかりやすいのではないか、という推測は可能です。
花粉症ではインフルエンザにかかりやすく悪化もしやすい
2010年の「PLOS ONE」という医学誌に、アレルギー性鼻炎と鼻ポリープでは、インフルエンザの感染が起こりやすかった、という研究結果が報告されています<参照文献(1)>。
インフルエンザウイルスは、鼻の粘膜の表面にある、シアル酸という構造を一種の受容体として結合するのですが、このシアル酸の種類と数によって、インフルエンザに対する感染のしやすさが変わります。鳥インフルエンザが人間に感染しにくいのは、このシアル酸の構造が違うためだといわれています。
しかし、アレルギー性鼻炎の結果として起こる鼻ポリープの組織に、インフルエンザウイルスを感染させて、アレルギーのない粘膜と比較したところ、鼻ポリープではその表面にシアル酸受容体がたくさんできていて、インフルエンザウイルスの感染が起こりやすく、ウイルス量もより多くなることが認められたのです。