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神戸山口組分裂初の幹部襲撃事件が発生…静まり返っていた尼崎に流れた「仁義なき不協和音」

文=沖田臥竜/作家
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神戸山口組分裂初の幹部襲撃事件が発生…静まり返っていた尼崎に流れた「仁義なき不協和音」の画像1古川総裁が襲撃される直前に立ち寄っていた飲食店

 神戸山口組幹部である三代目古川組・古川恵一総裁の身に何か起こるなら、その飲食店か同店周辺ではないかと、関係者なら誰しもが予測することができていた--。

 筆者のもとに関係者から一報が入ったのは、事件発生後すぐのことだった。筆者が事件に関する正確な情報を入手したのは、ほかのヤクザ業界に詳しいライターや記者よりも早かったのではないだろうか。なぜならば、その襲撃現場は兵庫県尼崎市。そう、筆者の地元だったからだ。

 3月7日午後8時半頃、古川総裁が襲われた。

 古川総裁は、親族が経営する飲食店から出て、三和商店街(阪神尼崎駅そば)に差し掛かったところで、鉄パイプのような武器を携帯していた三十代くらいの2人組に暴行されたのだ。

 襲撃した2人組は、古川総裁に致命傷を負わせるつもりはなかったように推測される。なぜならば、彼らは武器で後頭部や顔面を狙わずに、右足ばかりを狙って殴打しているからだ。結果、古川総裁は右足をひどく痛め入院することになったものの、命に別状はなく、大事に至っていない。

 ただ、事態の深刻さはケガの度合いとは関係ない。六代目山口組分裂後、神戸山口組が結成して初めて、直参幹部が襲撃されたのだから、それだけでも業界関係者の間ではショッキングな事件と捉えられるのではないか。

 この事件についてまず考えられるのは、計画的犯行だということだろう。だが、犯人らは古川総裁の動向を入念に監視し続ける必要はなかったと著者は推測する。理由は、古川総裁の親族が経営している飲食店を出て、すぐに襲われているところにある。

六代目山口組系組員が所有していたメモ書き

 尼崎でのヤクザ事情を少しでも知る者の間では、古川総裁が頻繁にその店を訪れていることは半ば常識で、筆者自身、その姿をこれまで何度も見聞きしていた。

 古川総裁が昨年、任侠山口組設立時に同組本部長である四代目真鍋組・池田幸治組長らに引退を迫られたという時も、古川総裁はその店で飲食中だった。

 六代目山口組分裂後、二代目古川組としてまだ六代目側に残っていた頃、六代目最高幹部らが古川組本部事務所を激励に訪れた際にも、その後、最高幹部らと同店を利用していた。また、神戸山口組移籍後も、当時、神戸山口組若頭代行を務めていた任侠山口組・織田絆誠代表らと、そこで飲食したことがあったのだ。

 もっとも、古川総裁の周辺に不穏な空気が流れだしたのは、今から1年以上も前の話だ。ある六代目山口組系組員が逮捕された際、この男の所持品にあったメモに、古川総裁の自宅マンションやかかりつけの病院、そして親族が営んでいる今回の飲食店の場所などが記されていたのだ。

 警戒を強めた尼崎南警察署は当時、メモ書きにあった病院や自宅マンション付近に、監視カメラを設置しようとまでしていたほどだ。

 だからこそ、冒頭で触れた通り、古川総裁の身に何かあるならば、親族が経営する飲食店やその周辺ではないかとみられていたのだ。

 かつ、古川総裁は現在、昨年、袂を分かった任侠山口組の古川組が使用している本部事務所の権利をめぐっても、民事訴訟で任侠山口組と対立している状態である。

 筆者は、古川総裁が襲撃される少し前に襲撃現場近くにいた人に話を聞いたのだが、不審者などには気がつかなかったという。ただ、このように話している関係者がいる。

「犯人の2人組はマスクをして古川総裁を襲撃したようだが、逃走中にマスクを外して逃げている映像が監視カメラに残っているという。犯人が見つかるのに、そんな時間はかからないのではないか」

 ヤクザの世界である。ましてや、山口組は現在、分裂につぐ分裂の真っ只中。いくら当局による締め付けが強化されてるとはいえ、やった、やられたは当然の流れといえる。だが、今回の事件をよく知る関係者の話によると襲撃時、古川総裁は奥さんとお子さんといたという。甘い世界でないことは筆者自身も十分に理解はしている。しかし、妻や子どもと一緒にいる際に襲撃するとは、ヤクザの仁義に反するのではないだろうか。

 筆者が自身の親分の引退に伴い、ヤクザ社会から足を洗ってまだすぐの頃、尼崎市内でたまたま古川総裁と出会ったことがあった。

「おっ、 久しぶり!」

 こう声をかけてくれ、「おもちゃでもこうたりい」と、筆者の子どもへとお小遣いをくれたことは、人の上に立つものの優しさとして、今までもしっかり胸に残っている。

 今後、事態がどのように変貌するかはわからない。だが、事件発生後すぐに襲撃現場周辺には規制線が張られ、また尼崎がきな臭い不穏な空気を漂わせ始めたように思えてならない。

(文=沖田臥竜/作家)

●沖田臥竜(おきた・がりょう)
2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、『山口組分裂「六神抗」』365日の全内幕』(宝島社)などに寄稿。以降、テレビ、雑誌などで、山口組関連や反社会的勢力が関係したニュースなどのコメンテーターとして解説することも多い。著書に『生野が生んだスーパースター 文政』『2年目の再分裂 「任侠団体山口組」の野望』(共にサイゾー)など。最新小説『忘れな草』が発売中。

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