財務省が森友学園との国有地取引に関する決裁文書を改ざんした問題について、麻生太郎財務相は12日、改ざんについて「理財局の一部の職員により行われた」「最終責任者は佐川」と明言した。辞任した佐川宣寿国税庁長官が、国会招致される見通しとなった。
一方、森友学園の前理事長の籠池泰典氏と妻の諄子氏は、昨年7月31日に大阪地検特捜部に逮捕され、いまだ公判も始まらぬまま7カ月以上も大阪拘置所に勾留されている。国土交通省が委託した一般社団法人に、工事費を水増しした工事請負契約書を提出し約5600万円を詐取したという詐欺容疑によるものだ。学園は昨年3月下旬に全額を返還しているが、こうした長期勾留は妥当なものなのか。それとも異例で不当なものなのか。警視庁OBは語る。
「勾留の理由となり得るのは、住所不定であったり、証拠隠滅のおそれや、逃亡のおそれがある場合です。籠池夫婦の場合、住所不定は当たらないし、有名人なので逃亡のおそれもないでしょうから、証拠隠滅のおそれということになります。一般の人からすると証拠は地検が全部押さえてるはずだから、証拠隠滅のおそれはないだろうと見えるかもしれません。ただ彼は正直に喋っていないし、嘘も明らかになっています。まだ隠していることがあるかもしれない。さらに何か証拠が出てくる可能性もあるかもしれません。
また、籠池夫婦の性格からして、外に出たら公の場でああだこうだと好き放題に言うことは目に見えてますから、裁判に影響を与えるという懸念があるんじゃないでしょうか。一般的に言えば、詐欺という単純な容疑としては、やや長いなという気はします。単純な事件だと、たとえば薬物の所持、使用などの容疑でも、さっさと保釈してしまいますから。組織的犯罪の場合はなかなか保釈しないですが、籠池夫婦はそういうケースでもないですからね」
なおざりにされる推定無罪の原則
決裁文書の改ざんが明らかになり、「証拠隠滅していたのは財務省じゃないか」という声も上がっているが、こうした長期勾留は日本では珍しいものではない。判決が出る前の未決勾留は、あくまでも身柄を確保しておくもので名目上は刑罰ではない。だが伝えられているところによれば、籠池氏が入れられているのは窓が一切ない部屋、諄子氏が入れられている部屋は小さな窓が1つあるが冷暖房のない部屋とのこと。判決が出る前に刑罰が科せられているに等しい。
人質司法とも批判されるが、日本では起訴されると99.9パーセントという高い率で有罪となるため、推定無罪の原則はなおざりにされている。他の先進国では有罪率は7~8割であるため、推定無罪の原則が活きていて、殺人の容疑で逮捕されても保釈されるケースも多い。日本なら殺人の容疑で逮捕されたら、ほとんどすべての場合、判決確定まで勾留されるので、裁判が長引けばその期間は数年にわたる。