「日本の場合は、殺人の容疑者を外に出したら、関係者を殺しにいってしまうのではないかということを懸念するわけです。それも証拠隠滅のひとつですから。勾留は検察が申請して、裁判所が判断するというかたちで、却下される場合もあります。未決勾留は、程度の差はあれ人権侵害です。籠池夫婦の場合は、社会的影響とを天秤に掛けて、彼を外に出した場合の悪影響のほうが大きいと裁判所が判断したということではないでしょうか」(同)
安倍政権に逆らった者ということで、司法さえも政権に忖度しているのではないかという声もあるが、どうなのだろうか。
「検察はともかく、裁判所は忖度しないでしょう。籠池夫婦は国を欺こうと、あまりにも常軌を逸した行動を取ってましたからね。特に政権のことを思わなくても、いわゆる社会通念から判断していると思います。通常と違うことをやったら勘ぐられるわけですから、忖度するよりは淡々と通常通りにやっていると思います」(同)
「前科」のある大阪地検特捜部
大阪地検特捜部といえば、2009年に、当時の厚生労働省の村木厚子局長が被告になった障害者郵便制度悪用事件において、証拠品であるフロッピーディスクのデータを改ざんしたことが知られている。2010年、大阪地裁で無罪判決が確定し村木氏に言い渡されたが、彼女にしても約5カ月間勾留されたのだ。
大阪地検特捜部は、公用文書毀棄などの容疑で、森友文書書き換え当時の財務省理財局長である佐川氏への告発を受理しており、事情聴取を検討すると見られている。財務省の改ざんを、改ざんの“前科”がある大阪地検特捜部が厳しく捜査することができるのだろうか。
「たいぶ人を入れ替えたと聞いてます。そういう目で見られているというのはわかっているでしょうから、きちんと捜査はすると思います。汚名返上のチャンスですからね」(同)
ちなみに麻生財務相から改ざんの最終責任者と名指しされた佐川氏。国税庁長官の退職金は約7000万円と言われているが、受け取ることができるのだろうか。
「懲戒免職ではなく辞任ですから、退職金は出ます。ただ、麻生財務相は佐川氏を減給20%、3カ月の懲戒処分とし、その分を退職金から差し引くとしています。懲戒処分を受けた時にはボーナスも減額になりますから、同じく報償的な意味もある退職金そのものも減額されるでしょう。とはいえ満額の半分を切るということはないでしょう。責任を感じて、全額を返納するという選択もあり得ますけど、しないでしょうね」(同)
政権を守るための答弁をした者への不当な仕打ちと見るか、改ざんを指揮した者が手にする不当な退職金と見るか。国会に招致された際、佐川氏が何を語るのか、注目されるところだ。
(文=深笛義也/ライター)