2018年に入ってマンション市場も、一見「適温」状態が続いている。新築マンションの値上がり傾向は継続している。都心の土地価格はいまだにジワジワと上がり続けている。建築費も下がらない。だから売り出し価格は徐々に上がっている。しかし、実際にそんな価格ではなかなか売れない。だから建物が完成しても販売が続く。結果的に値引きを余儀なくされる。それでもなかなか売れない。完成在庫ばかりが増えていく。
ただし、そういう状況の変化は普通の人にはわかりにくい。だから、表面に出てくる売り出し価格を見て「マンションの値上がりは続いている」と思われてしまう。
中古市場でも、状況は似たり寄ったりだ。ある都心のタワーマンションは、建物が完成してから半年以上が経過している。レインズに出ている売り出し住戸は88物件。この1年の成約数は9物件。1カ月に1住戸程度しか売れていない計算になる。成約している9物件は、88件の売り出し価格をかなり下回っている住戸が多い。つまり、高く売り抜けようとしている人が多い割には、彼らの思惑通りには売れていない。これも一般人にはわからない市場の現象。
私が局地バブルと呼ぶ今の現象が、本格的に始まったのは2014年の後半。まさに日本銀行の黒田東彦総裁が異次元金融緩和第2弾の「黒田バズーガ2」を撃ったのが合図となった。以来3年超、東京都心や城南、湾岸、川崎市と横浜市、京都市、大阪市の一部では説明がつかないレベルにまでマンション価格が高騰した。
銀行の金庫にお金が有り余って貸出金利も史上最低レベルなのに、多くの企業は設備投資に踏み切らない。なぜなら人口減少の日本社会では需要の伸びが期待できないからだ。余ったお金は、不動産投資によって値上がりや利回りを求める個人投資家やリートに流れた。その結果、不動産担保融資残高は平成大バブルのあの時代を超える水準にまで膨らんでいる。
つまり、黒田日銀総裁が「お金を増やしてインフレを導こう」という政策はほぼ完全に思惑が外れたばかりか、不動産の局地バブルという不健全な現象を生み出してしまった。今やそのことを率直に認めて、異次元金融緩和から金融引締めへと政策転換すべき時なのだ。アメリカもヨーロッパも、すでに金融引き締めに転じている。