普通なら外国為替が円安ドル高になってもおかしくないが、年明けこのかた円はドルに対して上昇傾向だ。この原因はなんとも説明しがたい。しかし、アメリカはパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の下で、今年もあと3回もしくは4回の利上げが予定されているとか。日米の金利差が3%台の後半に達するのは、いかにも不自然であり不健全だ。その金利差を狙った大きな資金移動が金融の混乱を招きかねない。
最後に、本年最大最強の不確定要素は北朝鮮問題だ。
(1)北朝鮮は核とミサイルの開発を諦めない
(2)アメリカは北朝鮮による米本土に届く核ミサイルの保持を許容しない
この2つの現実的事象が変わらない限り、仮に米朝の首脳会談が実現したとしても軍事衝突の可能性は確実視したほうがいい。問題は「いつ起こり」「日本にどう影響し」「どのように終わるか」ということだ。前者については、米朝首脳会談の帰趨にもよるがそう遠くない未来と考えるべきだ。早ければ米朝首脳会談の帰趨が見える5月末も想定できる。在日アメリカ軍はさまざまな戦闘に備えた猛訓練を実施している様子。それが多発している事故につながっていると推測できる。
問題は、日本がどうなるかだ。最悪なのは核や化学・生物兵器を搭載したミサイルを撃ち込まれたり、テロによって大きな被害を受けた場合だ。その時は不動産市場が凍り付く。回復するまでに数年を要する可能性もある。賃料収入をアテにしていた利回り物件や、値上がり期待で買われたタワーマンションなどは暴落する可能性が高くなる。
仮に、日本が大きな被害を受けないとすると、軍事衝突の終わり方が問題だ。アメリカが軍事的に北朝鮮を圧倒するのは自明。問題はどういう終わり方をするかだ。あの太った指導者を北朝鮮国内で生き残らせるのは最悪。東アジア全体の不安定が継続する。
理想的なのは、核もミサイルも現指導部もきれいさっぱりと片付けて後に憂いを残さないこと。そのためには、北朝鮮の政権が中国の傀儡的なものになってもよいはずだ。アメリカはアフガニスタンとイランの失敗で、戦後処理の責任負担を極力回避する可能性が高いと思う。この場合、日本の不動産市場にとっても、あるいは世界経済を俯瞰的に考えても、大きな不安材料が取り除かれることになる。かなりのプラス要素だ。日本のマンション市場にとってもフォローの風になる。
しかし、未来はしばしば想定外だ。金融も、地政学も、後から説明するのはたやすいが、正確な未来図を描くのは困難だ。我々にできることは、できる限り「想定外」を小さくしておくことでしかない。
(文=榊淳司/榊マンション市場研究所主宰、住宅ジャーナリスト)