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東京都、震度6強で倒壊の危険ある建物リスト公表が波紋…有名スポットがズラリ

文=深笛義也/ライター
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東京都、震度6強で倒壊の危険ある建物リスト公表が波紋…有名スポットがズラリの画像1SHIBUYA109(「Wikipedia」より/Keramahani)

 歴史的に繰り返し発生していることから、マグニチュード7級の東京直下地震がいつか必ず起こるといわれるが、東京都は3月29日、震度6強の地震で倒壊、崩壊する危険性のある建築物について発表した。東京全域で251棟が「倒壊し、または崩壊する危険性が高い」建築物に当たる。

 そのなかには、女子ファッションの発信地である「SHIBUYA109(道玄坂共同ビル)」や、ボウリング場、サウナ、飲食店が入る「ヒューマックスパビリオン新宿歌舞伎町」、上野のファッション専門店「アブアブ赤札堂上野店」、マッサージ店、金券ショップ、飲食店などが入るサラリーマンの憩いの場「ニュー新橋ビル」、青少年の学びの場である「科学技術館」が入っている。「東邦大学医療センター」「日本大学医学部附属板橋病院」「東京共済病院」などの医療機関も含まれている。「ライオンズマンション飯田橋」を初めとして、集合住宅も多い。

 紀伊國屋書店新宿本店がある「紀伊國屋ビルディング」は、ル・コルビュジエに師事したモダニズム建築家・前川國男氏の設計で、昨年「東京都景観条例」に基づき東京都選定歴史的建造物に指定されたが、ここもまた「倒壊し、または崩壊する危険性が高い」建築物に含まれている。今回の調査で除外されたのは、国宝や重要文化財のみである。

 今回の発表は、2013年に施行された「改正耐震改修促進法」に基づくもので、他の自治体でも行われている。同法は、不特定多数の者が利用する建築物の所有者に、耐震診断を行い所管行政庁に報告することを義務づけており、その報告がとりまとめられて公表されたものだ。

 耐震診断の結果の区分として、地震に対して、1【正式表記はローマ数字、以下同】が「倒壊し、又は崩壊する危険性が高い」、2が「倒壊し、又は崩壊する危険性がある」、3が「倒壊し、又は崩壊する危険性が低い」となっている。251棟は1に該当するもので、1から3まですべて含めると、852棟となる。

 3に関しては、「地震に対して安全な構造であると判断できる」との但し書きもあり、一般都民にとってわかりやすい表現とはいいがたい。これでは、危険性が低いのか、危険性がないのか、わからない。

 また、耐震診断の結果は以下のように説明されている。

「なお、上記は震度6強から7に達する程度の大規模の地震に対する安全性を示しており、いずれの区分に該当する場合であっても、違法に建築されたものや劣化が放置されたものでない限りは、震度5強程度の中規模地震に対しては損傷が生ずるおそれは少なく、倒壊するおそれはないとされています。また、地震に対する安全性の評価が1、2であっても、それをもって違反建築物とは扱われません」

 この「安全性」という言葉から、震度6強から7の地震に対しても安全なのかと受け取ってしまう。大辞泉で「安全性」を引くと「危険がなく安心であることの度合い」となっているから、そう理解するのが普通だ。ここは「安全性」ではなく「危険性」とすべきではないのだろうか。

改修は“努力義務”

 そうした疑問を東京都の担当部局に問い合わせてみると、「改正耐震改修促進法に基づいた表現で、特に作為はありません」との返答だった。

 危険性のある1、2も「違反建築物とは扱われません」とあるが、すると改修の義務はないのかと問うと、「耐震診断は義務づけられているが、改修については努力義務です」とのことであった。改修工事を始めている建築物については、発表でそのように明記されているが、必ずしもしなければいけないということではないのだ。

 地震に見舞われた際に、退避できる広場などがあればいいが、繁華街などに居合わせた場合、落下物から身を守るために頑丈そうな建物に逃げ込むことになる。だが、その建物が倒壊してしまったらさらに危険だ。今回の発表で1に該当する建築物には、それとわかるような表示を掲げさせたらいいと感じるが、「今のところ、そういう考えはない」との返答だった。集客にも影響が出てしまうから、それも理解できるが、建築物の所有者が自主的に改修工事を始めることを祈るばかりだ。

 今回の発表は、想定以上に東京直下地震がやってきたときには危険だと感じさせるものだったが、東京都としては「他の地域と比べて、特に東京が危険ということはない」とのことである。東京には「東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例」があり、災害時の大動脈になる幹線道路沿いの建物に対して特に耐震診断を義務づけたため、該当する建築物が多くなったということのようだ。

 今回の発表が、耐震化への意識向上につながることを願いたい。
(文=深笛義也/ライター)

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