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メルカリ上場、抱える「法令遵守」という経営リスク…多額広告宣伝費で財務悪化懸念も

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 メルカリの業績拡大は、同社のアプリを介してモノやサービス(コト)を取引する個人が増加したことに支えられている。それは、人々がモノなどを購入しその所有権を手にすることを重視するよりも、状況に応じた柔軟な利用を重視するようになったからだ。カーシェアなどシェアリングエコノミーの普及にも、同様のことがいえる。

 加えて、メルカリの場合、そのサービスを活用することで、経済的な収入を得ることもできる。自分自身には不要であるモノに、他人が価値を見いだすケースは少なくない。問題は、他人が使ったものでもいいから欲しいと思う人を見つけることができるか否かだ。

 メルカリは、ネットワークテクノロジーを活用して、個人同士のモノやコトの取引を仲介し、手数料収入を得て成長してきた。ネットオークションなどの競合相手との差別化になったのは、メルカリがスマートフォンを重視してテクノロジーを使いやすい環境を整備したからだ。また、出品制限が相対的に緩かったことも、人々が他社のサービスよりもメルカリのプラットフォームを選択する要因だったと考えられる。

上場の目的は海外事業の費用捻出

 
 メルカリのプラットフォーム上でC2C取引が増加するにつれ、通常では考えられない出品が出始めた。特に、盗品が出品されたことは、同社の法令遵守姿勢への懸念を高めた。それが、本来であれば昨年末に行われると考えられてきた上場が遅れる一因になった。法令遵守に加え、小学校の宿題代行サービスなど、本来の目的や意義、社会的な公正さに照らした場合に疑義のあるサービスなどがメルカリに出されてきた。

 この状況を「新しいテクノロジーに法律や規制が対応していないから仕方がない」と論じることは適切ではない。企業が事業を行い、利益を獲得した段階で、社会的な責任は果たされなければならない。それを実現することは、同社が真正面から取り組まなければならない課題だ。

 この課題を解決するために、法令遵守などを徹底するにつれコストが増加する。たとえば、ネット上のフリーマーケットの取引監視のためのテクノロジーを開発したり、それを開発する人材を確保することは、同社が社会的な責任を果たすために不可欠だ。メルカリにとって、そのための支出は増加していくだろう。同時に、取引のルールが厳正化され、フリマ(C2C)事業の成長性が低下することも考えられる。

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