今年2月、東京・港区の人口が25万人を突破した。港区は1956年に人口が25万人に達して以降、人口減少が続いてきた。
港区が半世紀以上にもわたって人口を減らしてきた理由は、なんといっても地価高騰が最大の理由だ。東京の中心部にあり、港区の不動産価格は高騰を続けてきた。とても庶民に手が届く住宅価格ではなく、人が住めるような住環境にはなかった。
しかし、東京23区の人口減少の兆しが顕著になると事態は一変。都心回帰の現象が顕在化した。都心回帰現象がもっとも顕著に表れているのが、湾岸エリアの江東区だ。昭和40年代までの江東区は工業地帯という趣が漂い、大規模工場もあちこちにあった。それが昭和50年代から次々と移転。広大な工場跡地は、タワーマンションなどに姿を変えた。
広大な工場跡地を再開発したこともあり、江東区のタワーマンションは隣接する中央区や港区などのタワマンよりも圧倒的に価格が安く供給できるというメリットがあった。そのために、購入者が殺到。タワマン人気によって、江東区の人口は爆発的に増加した。いまや、江東区の人口は52万人にまで迫る。
江東区が火を点けたタワマンブームは、歳月とともに中央区や千代田区、港区にも飛び火した。オフィス街を擁する中央区は利便性のよさから、人口は一気に増加。行政も人口増を後押しする政策に取り組み、中央区の人口は16万人を突破。20万人も視野に入っている。
2000年代に入ると、都心回帰現象はさらに加速。その追い風に乗って、さらに中心部に位置する港区も一気に人口が増加していった。
ふるさと納税による財源の流出
順調に人口を増加させている東京23区、特に都心部は人口増が著しいが、目下、悩みの種になっているのがふるさと納税による財源の流出だ。東京23区には目立った特産品がない。それゆえに、高級な肉や魚などでふるさと納税を集める地方に対抗できない。本来なら自分たちの区が得られるはずだった住民税などは、ふるさと納税によって流出。その額は年々増えている。
2017年度におけるふるさと納税の年間流出額は、23区ワースト1の世田谷区が約31億円、ワースト2の港区は年間約23.5億円、ワースト3位の杉並区は13.9億円となっている。地方に多額の税が奪取されている23区は、危機感を強めている。
世田谷区は、テーマ型ふるさと納税を創設。肉や魚でふるさと納税をかき集める地方に対抗する構えを見せる。杉並区は消耗戦の様相を呈しているふるさと納税競争には参入せず、「返礼品合戦になっている、ふるさと納税制度がおかしいということを訴え続ける」(杉並区職員)という。
一方、ワースト2の港区は、そうした様子をいっさい見せない。港区から税が流出しているのは、ふるさと納税制度だけではない。東京23区には独自に適用されている都区財政調整制度という制度がある。これは、本来は市町村の税収となる固定資産税・法人住民税・特別土地保有税の3税が、東京23区に限っては都の税収になるというもの。同制度によって、港区は都に税を収奪されている。