ビジネスジャーナル > 社会ニュース > 韓国、国際常識が通じない国家に
NEW
「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

【慰安婦財団解散】韓国、国際常識が通じない国家に…日米との約束無視で同盟関係崩壊

文=相馬勝/ジャーナリスト
【慰安婦財団解散】韓国、国際常識が通じない国家に…日米との約束無視で同盟関係崩壊の画像1韓国 定例「水曜デモ」(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

 欧米人はときどき、相手が予想できないリアクションをした際、「地球とはまったく違う惑星に来たみたいだ」という表現をすることがある。最近の韓国の動きを見ていて、この表現を思い出した。

 さきに韓国最高裁が日本企業に賠償を命じた「徴用工」訴訟の問題は、国家間の約束を無視し、戦後築いた日韓関係を崩すものだ。元慰安婦を支援する財団は、日韓合意に基づき日本政府が拠出した10億円を財源に韓国政府が設立したもので、元慰安婦の7割以上が財団による現金支給事業を受け入れている。合意の骨格をなす財団の一方的な解散は背信行為に等しい。

 ところが、韓国で文在寅政権が誕生してから、日本との約束をたて続けに破っていることで、文政権は国際的な常識が通じない“他の惑星のエイリアン(宇宙人)”になってしまったとしか思えない。日本からみて文政権が理不尽であると思うのは、「韓国は国際的なルールを守る国である」ということを前提しているためだ。北朝鮮が同じことをしても、仕方がないと思うだけだろう。なぜならば、北朝鮮は国際常識が通じない国であるとの諦めが我々のなかにあるからだ。

 これと同じように、もはや韓国は地球上の国ではなく、宇宙人が住んでいる、あるいは宇宙人的な発想をしていて、地球の国際的な常識は通じないと思えば、これまでの文政権の言動は理解できないこともない。もはや言葉が通じないのだ。

 これについては、米国のポンぺオ国務長官も同じことを感じているらしい。長官は米韓両国政府による北朝鮮問題をめぐる作業部会を設置する目的について、「米韓両国が互いに違ったことを言わず、また米国も韓国も互いが知らない状況で勝手に行動しない」ためと明言した。つまり、長官は韓国が北朝鮮問題で米国との約束を破り、文政権が南北融和関係の構築に前のめりになって、米国政府との合意に反して独断専行していることを戒めているのだ。

 このところ、日韓関係や米韓関係がぎくしゃくするような動きが多くみられているが、この原因は文政権が国際常識や二国間の約束を無視して、自分勝手な行動をとっているからだ。文政権はいわば「エイリアン」の集まりといっても過言ではないのである。

解散手続きの具体的な内容

 ところで、実際問題として財団をめぐる今後の動きはどうなるのか。

 慰安婦財団を所管している担当官庁である韓国女性家族部は21日、財団の解散のために「すみやかに法的手続きに入る」としているが、韓国の聯合ニュースによると、解散までには半年~1年ほどかかる見通しだ。以下、解散手続きの具体的な内容については、聯合ニュースをもとに詳述する。

 財団は女性家族部の法人設立許可を得た非営利法人で、慰安婦被害者の名誉回復や傷の癒やしを目的とし、日本政府が10億円を拠出し、2016年7月に韓国で設立された。財団の具体的な事業は、理事会の議決や外務大臣との協議を経て、女性家族部長官の承認を受け実施する。

 財団を解散する場合の手続きは2通りだ。定款によると、財団を解散させるためには在籍理事の3分の2以上が賛成し、女性家族部長官の承認を得なければならない。女性家族部長官は外務大臣と協議し、承認するかどうかを決める。

 もう一つの方法は、担当官庁である女性家族部が財団法人設立の許可を取り消す「職権取り消し」というやり方だ。民法によると、財団の目的の達成が不可能で機能を果たせない法人については、設立許可を取り消し解散できる。財団は発足当時11人の理事が選任されたが、民間からの5人全員が辞任するなどし、現在は2人しか残っていない。女性家族部は財団に設立許可を取り消すと通知し、財団側の意見を聞く聴聞の手続きに入る方針だ。続いて長官の職権で許可を取り消す。取り消しは2週間以内に終了する見通しだ。

 その後、裁判所が清算人を選任し、財団の職員や財産問題などを整理する清算手続きが行われる。当局は清算人の選任まで3~4カ月を要し、清算手続きの完了までは最長で1年かかるとみている。

 外交当局はその間、日本側と10億円の取り扱いについて協議するとみられる。女性家族部関係者は「日本側と残りの拠出金問題を協議するが、財団の解散にとって障害にはならない」との見解を明らかにしている。

「ポイント・オブ・ノーリターン」

 ところで、10億円の使い道についてだが、財団はこの10億円を財源として慰安婦被害者や遺族への現金支給事業を行い、合意時点での生存者のうち34人と死亡者58人の遺族に計44億ウォン(約4億4000万円)を支給した。

 だが、17年5月の文政権発足後、韓国政府は慰安婦合意の検証を行った上で10億円を韓国政府の予算で置き換えている。つまり、元慰安婦生存者らに支払われた現金は韓国政府の予算から出ており、日本政府が拠出した10億円は丸々残っており、韓国政府に預けられたままだ。

 しかし、この10億円について日本政府はいったん拠出したものであり、菅義偉官房長官も会見で「返還を求める考えはない。財団の残金が合意実施に適切に使用され、日本政府の意向に反する使い方をされないように強く求めたい」とはっきりと述べている。つまり、日本が拠出した10億円の問題も宙に浮くことになる。

 エイリアンと話し合っても言葉が通じないように、韓国側は日本側の言葉の意味がわかっても、もはや実行する意思がないのだから、話すだけ時間の無駄と言わざるを得ない。このため、筆者の意見は極めて乱暴だが、「文政権が倒れるのを待つほかはなさそうだ」というものである。あるいは、文政権が国際的な批判を浴びて、対話姿勢に転じるのを待つことも選択肢の一つだろう。

 いずれにしても、日韓関係は当分、最悪の状況に陥ることだけは間違いない。日韓関係はもはや「ポイント・オブ・ノーリターン(引き返せない地点)」まで来てしまっているからだ。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

【慰安婦財団解散】韓国、国際常識が通じない国家に…日米との約束無視で同盟関係崩壊のページです。ビジネスジャーナルは、社会、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!