NEW

競馬大吟醸 -阪神大賞典な人々-「見せてみろ、中年の意地」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
keibadaiginjou.jpg
「AC photo」より

「ごぉさっせぇ、ごぉさっせぇ、ごぉさせ、ごお、ごお、ごおおおっ、ああああああっ」

 先週、日曜日の話だ。煙草を買って「寿司屋の梅ちゃん」の店の前まで戻ってくると、店の中から大きなうめき声が漏れ出てきた。別に中で調子の狂った洗濯機が回っているわけでもなければ、痰が詰まったおじいさんが咳き込んでいるわけでもない。

 どうやら、阪神競馬の最終レースでM.デムーロ騎乗の単勝1.9倍だった「5番」グラッブユアコートが負けたようで、仕事そっちのけで応援していた梅ちゃんの"断末魔"が店先まで漏れてきていたようだ。だから正確には「5、差せ!」ということである。

 それにしても、たたき上げの寿司職人であるはずの梅ちゃんが、馬券だけは何故かエリート銀行員のようにガチガチの本命党。先週あたりまではデムーロと共に調子がよかったそうだが、その日はメインと最終でデムーロと共に派手に散ったらしい。

 土日の梅ちゃんの店は、平日の開店休業状態が嘘のように込み合う。常連さんの休みが週末に集中しているのか、それとも名物店主の馬券の惨敗ぶりを笑いに来ているのか、なにせ週末だけは職人が梅ちゃんを含めて3人もいるのだ。

 ただ、梅ちゃんは寿司ではなく、朝からずっと競馬新聞を片手に赤ペンを握っているので実質的に戦力外。ヘルプで入った2人の職人が店を回しているのだが、どうやら梅ちゃんの弟子で、今はそれぞれ店を持っているらしい。

 何故こんな話をしているのかというと、実はさっきまで梅ちゃんの店で、今日は客として来ていた梅ちゃんの弟子の「松井」という男と酒を飲みながら、今週の阪神大賞典(G2)について話していたからだ。

 松井はこのメンバーなら、ヴィルシーナの弟の「シュヴァルグランで堅い」と言う。前走は負けたが、あれがこの馬の実力ではないと言い張るのだ。確かに今年バンバン重賞を勝っている伸び盛りの4歳馬を推す気持ちはわかる。

 ただ、私はまったく別のことを考えていた。

 阪神大賞典といえば、同じ「阪神」タイガースに、岡崎太一というベテラン捕手がいる。

 ファンでなければ知らないようなマイナー選手だが、実は11年前の自由獲得枠で入団した元エリート。怖いもの知らずのビッグマウスが印象的で、入団当初は当時盗塁王だった赤星憲広を刺すと言ったり、新人王を獲りにいくなど、とにかく大口ばかりが目立つ若者だった。

 しかし、やはりプロの壁は厚く、11年間のプロ野球生活はほぼ2軍暮らし。逆に同期で新人の頃から寡黙だった能見篤史は阪神のエースになった。

 まあ、プロ野球じゃよくある話だが、今年になってそんな岡崎に転機が訪れている。監督が金本知憲に替わって、実は一軍どころか開幕スタメンに手が届きそうだと報道されているのだ。