「山口組経営学」』(竹書房)
銀行が預金約款の中に「反社会的勢力排除条項」を加えたことで、暴力団関係者は預金口座を持てなくなった。すでに開設している預金口座も解約させられることになる。このため、携帯電話の使用料金の口座引き落としができなくなった暴力団員が、月末近くになるとドコモショップに大挙して押し寄せることになる。
ある暴力団幹部は「子供が学校でいじめに遭っている」という。銀行口座が作れないため、授業料や給食費を現金で学校に持っていくことが、いじめの対象になったという。各都道府県が制定した暴力団排除条例(暴排条例)により、暴力団関係者とわかって利益やサービスを供与すると提供者も罰せられることになるため、外食ができなくなり、出前も取れなくなった。このような暴力団関係者が市民生活を営めない例は、枚挙にいとまがない。
しかし、そればかりではない。1991年の暴力団対策法、99年の組織犯罪処罰法以降、暴力団は確実に衰退し始めている。それは、昨今の暴力団犯罪を見れば顕著に表れている。
その象徴的な事件が、2011年7月に起こった2つの事件だ。山口組弘道会の直系組長が、愛知県内のホームセンターで窃盗(万引き)をして現行犯逮捕された。万引きした品物は、電球、キッチン用品、昆虫飼育用品など十数点で5500円相当だった。暴力団組長でありながら、犯行時の所持金は1万5000円。取り調べに対して、「子供用品や家庭用品を盗んだ」と供述した。
山口組弘道会といえば、現在の山口組6代目、司忍組長の出身母体であり、高山清司組長は山口組若頭を務める山口組の最大組織でもある。その弘道会の直系組長が万引きで捕まっているのだ。