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ルディー和子「マーケティングの深層と真相」(2月16日)

アマゾン、無料配送はなくなるのか?小売業、アマゾンとの死闘で膨大なムダ排除&利益向上

文=ルディー和子/マーケティング評論家、立命館大学教授

 ウォルマートのような米国小売業のオムニチャネル戦略を歴史的に振り返ってみると――といっても、この10年くらいの短い歴史だが――最初の頃に比べると、その中身が変化してきていることがわかる。

 第1段階は2000年代半ばで、O2O(Online To Offline)、つまり“オンラインからオフラインへ”といわれていた頃。ウォルマートでいえば、05年からの2年間のテストを経て、07年にインターネットで注文した商品を店舗で受け取れるサービスを全店で始めた頃だ。ウォルマートのテストによれば、ネットで注文した客の3分の1が店舗で受け取ることを選択する。そして、そういった客の60%が店舗に来たついでに60ドルの付加購買(衝動買い、ついで買い)をする。

 従って、店舗受け取りサービスを提供することで付加売り上げが期待できるリアル店舗のほうが、アマゾンのようなネット専業よりも競争優位に立てるというのが当時の大方の見解だった。

 アマゾンが、年会費79ドルを払うプライム会員に、配送料無料で2日以内に配送というサービスを始めたのは05年1月。それまでは25ドル以上注文の場合は配送料無料という一般的によく見かけるサービスを提供していた。無料配送サービスは期待以上の効果を発揮し、プライム会員は通常客より150%も多く購買し、サービス開始前の予測である2年より早く、わずか3カ月で損益分岐に達することが明らかになったという。ちなみに現在では、プライム会員の平均購買金額は通常客の2倍といわれる。

 このようなアマゾンへの対抗策として小売店も自社サイトで迅速な無料配送サービスを進めざるを得なくなったわけだ。しかし、それには経費がかかるので、客自身に店舗へ受け取りにきてもらおうと考えたのが、O2Oの始まった理由だといわれる。

 店舗受け取りサービスが始まった理由が店舗側の経済的理由であったとしても、米国における同サービスは、日本で考える以上に消費者にとって便利なサービスなのだ。宅配便サービスは日本と違って細かい時間帯指定はできない上、配達時に不在だった場合、電話したらすぐに再配達してくれるということもない。再配達も2~3回はしてくれるようだが、いずれも運悪く不在だった場合は、自ら配送センターまで取りにいくはめになる。従って、自分に都合のよい時間に、自分が選択した店舗に受け取りにいくほうがよほど便利なのだ。

ルディー和子/マーケティング評論家

ルディー和子/マーケティング評論家

早稲田大学商学学術院客員教授。
国際基督教大学卒業後、結婚・渡米を経て帰国、
米化粧品会社のエスティ ローダー社で働きながら
上智大学国際部大学院経営経済修士課程修了。
エスティ ローダー社ではマーケティングマネジャー、
出版社タイム・インク/タイムライフブックス社での
ダイレクトマーケティング本部長を経て、
マーケティング・コンサルタントとして独立、
自身の会社ウィトン・アクトンを設立
ルディー和子オフィシャルブログ

Twitter:@shouhigaku

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