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日向咲嗣『「無知税」回避術 可処分所得が倍増するお金の常識と盲点』第11回

確定申告裏技!領収書も面倒な計算も不要、冠婚葬祭全額交際費、レシートでもOK

文=日向咲嗣/フリーライター
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 3月5日付当サイト記事『ウソだらけの確定申告、知らないと損する 狙い目は期限翌日、知らぬ間に税金払いすぎ』に続き、「確定申告のウソ」に迫ってみたい。

 今回は、拙著『会社を辞めてフリーで・個人で独立成功 <かんたん経理・申告・節税>完全マニュアル』(明日香出版社)に掲載した、共著者で税理士の井上栄次氏との“ぶっちゃけトーク”を紹介したい。

領収書も計算もいらない?「裏申告」とは

–世間では、「サラリーマンは必要経費が一切認められていないが、自営業者は領収書を取っておけば経費がいくらでも認められる」と思っている人が多いようですが、それは勘違いですよね?

井上栄次氏(以下、井上) そうです。給与所得者の場合でも、給与収入全額に課税されるわけではなく、個人事業主の経費に当たる控除が認められています。それが「給与所得控除」です。所得税も住民税も、給与収入からその経費分に該当する給与所得控除を引いた所得に課税される仕組みになっています。

–つまり、サラリーマンの給与収入は自営業者の売り上げと同じで、そこから経費に当たる給与所得控除を引いた利益である給与所得に対して課税されるということですね。

井上 その通りです。給与所得者が個人事業主と大きく異なるのは、実際に使った経費に関係なく、年収によって経費と所得の額が一律に決まっていることです。

–その税額の計算を本人に代わって勤務先の会社が年末調整で行ってくれるのですから、会社員は楽ですね。

井上 実は、独立しても面倒臭いことは一切したくなければ、会社員と同じように領収書を1枚も取っておかなくてもできる申告方法があるのです。

–初耳ですが、本当ですか?

井上 一般的な方法ではないので、普通の人はまず知らないです。我々税理士は「裏申告」と呼んでいるのですが、別に悪いことをするわけではありません。タネを明かすと、個人事業主が確定申告する際、実際に経費がいくらかかったかに関係なく、会社員の給与所得控除額に当たる額を同じように経費として申告書に載せるのです。

–そんなことして大丈夫ですか?

井上 大丈夫です。多くの税理士がやっています。ただし、いくつか要件があります。まず第1に年収が1000万円以下であること、第2に事業所得でも報酬を1カ所だけからもらっていること。要するに、1カ所だけの下請けみたいなかたちで事業所得を得ている人であれば、会社員と同じように申告してもいいという理屈です。

–年収がいくらくらいまでなら、裏申告のほうが得ですか?

井上 それは一概にはいえません。ケースバイケースです。例えば、年収1000万円ある人で頻繁に仕事の付き合いで飲食をするような場合、給与所得控除の220万円くらいは軽く超えてしまうでしょうから、領収書を取っておいて実額の経費で処理したほうが有利になるでしょう。逆に年収300万円の人なら、経費に当たる給与所得控除は108万円ですから、そこまでの経費を使わない可能性は高いです。その場合、裏申告の方法を使えば、領収書を集めて計算する手間が一切なくても申告できます。

領収書がなくても経費と認められる?

–経費を計算する際に悩むのは、接待交際費のうちの冠婚葬祭です。香典やご祝儀を出しても領収書がありませんから、経理処理できないのです。

井上 そのような場合は、「誰々のどのような式に出席して、いくら支出した」と、出金伝票に書いてください。また、結婚式の案内状などに支出した額をメモして、それを領収書や出金伝票代わりにするのもいいでしょう。実際にそうしている人も多くいます。仕事関係で付き合いのある人の冠婚葬祭でしたら、それに支出した分は、領収書がなくても全額接待交際費として処理して問題ありません。

–領収書がなくても大丈夫なのですね。ほかの経費でも、領収書がなくてもいい場合はありますか?

井上 消費税の課税仕入れに関しては、原始資料がないと認められませんので領収書は絶対に必要ですが、所得税に関しては、費用として支出された事実が客観的に判断できれば領収書がなくても認められるケースが多いです。

–では普段の少額の経費などは、いちいち領収書を書いてもらわなくてもレシートで対応可能ですか?

井上 少額の買い物であれば、レシートでも問題ありません。むしろ最近は、領収書よりもレシートのほうが望ましいという税務署員もいるほどです。なぜなら、レシートであれば必ずレジで打ち出しますが、領収書は簡単に偽造できてしまうからです。

–それでは、ボールペン1本買って「領収書を書いてください」と頼むような面倒はいらないということですね。

井上 ただ、レシートには宛名がないので、本当に自分が払ったという証明にならないことが欠点です。したがって金額が大きいものについては、宛名を書いてもらった領収書を保管しておくに越したことはありません。

–ありがとうございました。
(文=日向咲嗣/フリーライター)

日向咲嗣/ジャーナリスト

日向咲嗣/ジャーナリスト

1959年、愛媛県生まれ。大学卒業後、新聞社・編集プロダクションを経てフリーに。「転職」「独立」「失業」問題など職業生活全般をテーマに著作多数。2015年から図書館の民間委託問題についてのレポートを始め、その詳細な取材ブロセスはブログ『ほぼ月刊ツタヤ図書館』でも随時発表している。2018年「貧困ジャーナリズム賞」受賞。

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