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徳岡晃一郎「世代を超えたイノベーションのために」(5月19日)

50代で“人生終了モード”の人と、楽しく働き続けられる人の違いとは?40代は“冒険”しろ!

文=徳岡晃一郎/経営コンサルタント、多摩大学大学院研究科長

 動の時代はビジネス拡大がメインだが、静の時代ではイノベーションが主な役割になる。動の時代は、ビジネスの最前線でがんばるが、そこで得た知識をそのままにして60歳前後で退職してしまうのではなく、仕切り直しをして再スタートするわけだ。

 55歳からは、新たな設備開発、ビジネス構造のイノベーション、顧客ニーズを広げる市場のイノベーションなど、動の時代にはできなかったことを担当する。動の時代に蓄積した知を原資にして、イノベーションを起こすために、定年なしで働いてもらうというのが、同社の理念だ。

 ここに、50代以降の「I」の時代のキャリアの鍵がある。40代までに広げた知を、50代以降のイノベーションのために使うことが大事であり、動から静に価値観を転換して、自分の居場所を作るのだ。

 前川製作所のように、自社の商品・サービスを根底から見直す研究開発的な役割もあれば、専門性を生かして世界の貧困や健康問題に貢献するなどの大きな視野で、自分の仕事を再定義する方法もあるだろう。今までの産業構造に風穴を開けるようなベンチャー、中堅中小企業のグローバル化や事業承継に絡んだり、NPOやNGOに身を投じるのも、自分のキャリアの再定義だ。

 また、経営者としては、自社のこれまでの土俵での成長戦略(動)を超えて、社会課題解決のために既存の産業の枠を超えた新規ビジネスを考える(静)という方向もあるだろう。静の時代のほうが、ある意味では熱いのかもしれない。

 筆者の場合は、40歳で日産自動車を退職し、「コミュニケーションのパワーで日本を変える」というビジョンのもとで、コミュニケーション戦略のコンサルティングを行ってきた。しかし、50代以降は個々の戦略策定だけではなく、「Thought Leadership」という概念を基軸にして、コミュニケーションの新しいOSを日本企業に提案し、活動の次元を上げるための取り組みをしてきた。また、多摩大学大学院という場を得て、多くのビジネスパーソンに知識創造リーダーになってもらうために自分の経験を伝えてきた。

 このように、50代以降は人生の撤退モードに入っている場合ではなく、いかに社会に貢献できるか、自分の役割を見直せるか、再定義できるかが大事である。それが、静の時代の役割であり「I」のキャリアなのだ。

 50代以降になれば、きっと誰もがそれだけの経験をしているはずなので、「自分は何を得てきたのだろうか」とセルフコーチングを行えば、さまざまな宝が見つかる。知識創造企業づくりだけではなく、「知識創造社会づくり」をも担っていけるはずだ。

知の交差点を見つけ、知の文脈を描こう

 以上、5回にわたってSECIモデルをベースにしたSECIキャリアモデルをお伝えしてきましたが、みなさんのキャリア形成のお役に少しでも立てたら幸いです。

 ぜひ、自分の知識を表出化しつつ、SECIキャリア年表を、また今後に向けてSECIキャリア未来図を描いてみてください。そうすることで、いろいろな知の交差点も見つかるはずです。自分の歴史として、知の文脈を描くのは楽しいですよ。
(文=徳岡晃一郎/経営コンサルタント、多摩大学大学院研究科長)

徳岡晃一郎/経営コンサルタント、多摩大学大学院研究科長

徳岡晃一郎/経営コンサルタント、多摩大学大学院研究科長

ライフシフトCEO
多摩大学大学院教授、研究科長、フライシュマンヒラード・ジャパン シニア・ヴァイス・プレジデント、多摩大学社会的投資研究所所長

1957年生まれ。東京大学教養学部卒業。オックスフォード大学経営学修士。日産自動車人事部、欧州日産を経て、99年フライシュマン・ヒラード・ジャパンに入社。人事およびコミュニケーション、企業文化、リーダーシップなどに関するコンサルティング・研修に従事。2014年より多摩大学大学院研究科長、2017年ライフシフトを設立、CEOに就任。主な著書に『MBB:「思い」のマネジメント』(共著、東洋経済新報社)『未来を構想し、現実を変えていく イノベーターシップ』(東洋経済新報社)、『人事異動』(新潮社)、『ミドルの対話型勉強法』(ダイヤモンド社)、『人工知能Xビッグデータが「人事」を変える』(共著、朝日新聞出版社)、『しがらみ経営』(共著、日本経済新聞出版社)など他多数。
株式会社ライフシフト

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