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伊藤忠、盟主・三菱商事を屈服させた「傍流の天才社長」…敵意むき出しの緻密経営

文=編集部
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 また、こんなこともあった。岡藤氏は10年4月、伊藤忠の社長に就任した。就任と同時に、万年4位の地位に甘んじてきた伊藤忠を「いつか財閥系と互角に渡り合える商社にする」と誓った。そして15年11月9日、アナリスト説明会で岡藤氏は万感の思いを吐露した。

「僕が社長になった当時、三菱商事は4位だった伊藤忠の倍以上の利益を出していた。それが、2年目で住友商事を抜き、5年目で三井との差が60億円になった。今期(16年3月期)、ひょっとしたら三菱商事を抜くかもしれない」

 有言実行の人である。想定外の大きな損失が出たら別だが、このままならこの発言通りになる可能性が高い。

 岡藤氏は、「キャッチフレーズづくりの天才」といわれている。社長に就任して最初に打ち出したのが「住友を抜く」という明確なメッセージだった。「商社ナンバー3」とか「業界3位を目指す」ではなかった。ほかの役員や側近は「(住友を刺激しないように、)『業界上位を目指す』と言い替えて社内外に発信しましょう」と進言したが、岡藤氏は「それではダメだ。社員に伝わらない」と一喝した。

 このメッセージが、中堅や若手の社員を鼓舞した。社内のイベントで若手社員が「伊藤忠vs.住友商事」をひねった寸劇を演じているのを見て、岡藤氏はにんまりしたという。言葉の魔力はすごい。12年3月期の純利益は伊藤忠が3005億円となり、住友の2506億円を上回り第3位になった。

 岡藤氏に対する株式市場の評価は高い。伊藤忠の株価は、岡藤氏が社長に就任した直後の10年7月22日の659円から右肩上がりで、15年6月24日には1756円と上場来の最高値をつけた。5年間で株価が2.7倍になったのだ。総合商社のような資本金の大きい、いわゆる大型株の株価が2.7倍になるのは異例だ。16年初頭からの株価急落で1月21日の終値は1219.05円まで下げたが、それでも1.85倍。その後、株価は反発した。岡藤氏は「株価を2倍にした男」といえる。

岡藤氏は今、何を考えているのか

 岡藤氏は昨年11月、社内向けイントラネットで社長続投を宣言した。この時、野球の国際大会・WBSCプレミア12において、日本代表の“侍ジャパン”が準決勝で韓国代表に逆転負けしたことに触れ、「先発が快投を見せたにもかかわらず、定石通りの投手交代で試合は逆転された。交代のタイミングは難しい」としつつ、自身が社長として果たすべき役割についてこう述べた。

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