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高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏

日本一の究極の梅酒の秘密…超前衛的な酒造会社、積極的すぎる行動連発で売上25倍

文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント
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サントリーとコラボ商品を出し、海外展開にも注力

日本一の究極の梅酒の秘密…超前衛的な酒造会社、積極的すぎる行動連発で売上25倍の画像4女性マーケティング部のスタッフ

 現在、中野BCの売上高は約35億円。梅酒部門の売り上げはこの8年で25倍となり、全社売上の約5割を梅酒・うめ果汁・エキスの梅関連事業が稼いでいる。今後も国内酒類市場が縮小見通しのなかで同社が目指す事業戦略は2つある。梅関連の深掘りと海外展開だ。

 梅関連の深掘り例としては、07年に発売した「梅真珠」という機能性食品がある。外見も大きさも胃腸薬の正露丸に似ているが、梅の成分だけでできた粒だ。それ以前に人気を呼んだのは「紀州の赤本 純正」という青梅を煮詰めた水飴状の品だった。

「研究開発を始めた当初は手探り状態でしたが、梅エキスが転機となりました。梅の果汁を大量に持っている当社の強みを生かし開発を続けた結果、00年に梅の実を絞って果汁にし、時間をかけてじっくり煮詰めた『純正』を発売することができたのです」(中野BCリサーチセンター食品科学研究所所長・我籐伸樹氏)

 発売直後から売り上げは拡大したが、「消費者に継続的に受け入れられるためには、摂取時の“障壁”を取り除く必要もある」(同氏)と判断して、開発を続けて出したのが「梅真珠」だった。近年は県内産の柑橘を主原料にした機能食品「アトピタン」や、青柿のサプリメント「柿玉」も開発した。国内の複数の大学とも連携して、効果効能の実証にも力を注ぐ。

 和歌山県も地元特産の農作物を用いる同社を支援する。3月1日からは同県主導の共同企画「和みックス」プロジェクトとして、同社とサントリー酒類の共同開発商品「紀州果実シロップ」を発売。飲食店ではサントリーのハイボールの割材での提供も予定する。

 海外事業では、これまで注力してきた香港や台湾などに続き、13年から「Ume World Project」という活動をスタートさせた。個々に販路を開拓するのではなく、梅の加工食品を販売する地元メーカーと連携して「和歌山の梅」を世界に広める活動だ。

「EU各国では、経済発展しているオランダの関心が高く、日本食が人気のフランスからも梅の引き合いがあります。県の食品流通課の支援も受けて活動しています」(中野氏)

 同社では本社工場の見学も積極的に行っており、年間約5万人が訪問するという。また年に数回「梅酒BAR」や「にほん酒BAR」というイベントを開催して一般客との交流を行っている。

 社長の中野氏、製造部長の山本氏、研究所長の我籐氏は、いずれも40代。既存の常識にとらわれない柔軟な発想で、女性や若手の意見を有効活用して、消費者との対話を続ければ、カクテル梅酒や梅肉エキスに続く商品がさらに育つかもしれない。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)

●高井 尚之(たかい・なおゆき/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)
1962年生まれ。(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。10月16日に発売された『吉田基準』(日本実業出版社)では取材・構成を担当。これ以外に『カフェと日本人』(講談社現代新書)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。
E-Mail:takai.n.k2@gmail.com

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