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鬼塚眞子「目を背けてはいけないお金のはなし」

介護離職、年間10万人で社会問題に…会社側の「間違った説明」が原因の場合も

文=鬼塚眞子/一般社団法人介護相続コンシェルジュ代表、保険・介護・医療ジャーナリスト

助成金制度発足の可能性も

 介護休業制度の企業独自の規定の必要性はわかっていても、中小企業は、まだまだ十分とはいえないのが現状だ。「厚生労働省 雇用均等基本調査」によれば、介護休業制度の規定整備状況は、500人以上の企業は平成26年度では99.2%であるのに対し、30人以上は88.0%、5人以上の企業は66.7%だ。規模と規定整備は比例しているというべきか。

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 こうした要因を鑑みると、人手不足ということもあるが、それ以上に切実な問題が資金面だ。中小企業にとって、目先の資金づくりや商品開発や施設充実に少しでも資金を回したいのが本音だろう。

 しかし、朗報を紹介したい。厚生労働省で作成している「介護離職を予防するための両立支援対応モデル」(厚生労働省のHPで公開)に基づく取り組みを行う企業に対して、平成28年度から「介護支援取り組み助成金(仮称)」が創設される予定だ(現在、国会で審議中)。申請要件は以下のすべての取り組みを行った場合に支給対象を想定するもの。

(1)社内アンケートなどで従業員の仕事と介護の両立に関する実態把握
(2)社内研修の実施、リーフレットの配布等で介護に直面する前の従業員への支援
(3)相談窓口の設置及び周知といった介護に直面した従業員への支援

 企業の規模にかかわらず、1企業1回のみ60万円を給付する見込みだ。このほかに、育児介護支援プランコース(対象は中小企業のみ)の創設も検討されている。こうした制度が新設され、企業が活用することで、介護離職に歯止めが多少なりともかかることを期待したい。

 とはいえ、企業も従業員も安易な自己判断は禁物だ。新設される助成金以外にも活用できそうな助成金がある。その申請および就業規則の策定には、介護労務問題に明るい専門家との連携が、今後不可欠になることは間違いないだろう。

 また従業員も「介護になったら、会社がなんとかしてくれる」と勤務先に依存するのではなく、第三者機関に相談するなどの自助努力も必要になってくる。企業も従業員も介護問題を先延ばしにするのではなく、まずは意識を持ち、経験者の話を人ごとでなく、自分に置き換えて話を聞いてみるだけでも、介護離職防止の第一歩になるはずだ。
(文=鬼塚眞子/一般社団法人介護相続コンシェルジュ代表、保険・介護・医療ジャーナリスト)

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

出版社勤務後、出産を機に専業主婦に。10年間のブランク後、保険会社のカスタマーサービス職員になるも、両足のケガを機に退職。業界紙の記者に転職。その後、保険ジャーナリスト・ファイナンシャルプランナーとして独立。両親の遠距離介護をきっかけに(社)介護相続コンシェルジュを設立。企業の従業員の生活や人生にかかるセミナーや相談業務を担当。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで活躍
介護相続コンシェルジュ協会HP

Twitter:@kscegao

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