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黒田尚子「『足るを知る』のマネー学」

退職金が危ない!一瞬で消失する人続出、ゆとりある老後に必要な月35万をどう確保?

文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー
退職金が危ない!一瞬で消失する人続出、ゆとりある老後に必要な月35万をどう確保?の画像1「Thinkstock」より

 統計によると、退職金は、大学卒(管理・事務・技術職、勤続年数35年以上)の場合、平均2,156万円。高校卒(同)の場合、1,965万円となっている(厚生労働省「平成25年就労条件総合調査」)。

 ただ、平均所得はここ20年で20%も減少(同省「平成26年国民生活基礎調査の概況」)。もちろん、退職金も例外ではないが、マジメにコツコツ働いていれば、いずれ数千万単位のお金が手に入るわけだ。

 筆者自身は20代後半で会社を辞めたため、もらった退職金はほんの数十万円。退職後すぐに出発した世界一周旅行で、瞬時に消えた程度の金額だったことからすると、羨ましい限りである。

退職金をそのまま一度に投資してはいけない!

 さて、まとまった大金を手にした退職者が、「将来、要介護状態や認知症になるかも」「思いがけず長生きしたらどうしよう」「預貯金は金利が低くて損」などと考え、虎の子的な退職金を、できるだけ増やさねばと投資に走る心情はよくわかる。

 しかし、慣れないことはするものではない。金融機関で勧められるままに投資型金融商品を購入し、大きく増やすはずの退職金が、あっという間に半分になってしまうケースも珍しくないのだ。

 結論から申し上げると、まとまった金額の退職金をそっくりそのまま一度に投資へ回すのは得策ではない。
 
 その理由として、退職金が投資のタイミングを選びにくい点が挙げられる。運用を始める時期と、投資に最適な時期がうまく合致するとは限らないのだ。

 図表1は、1984年以降の日経平均株価(以下、日経平均)のチャートだが、まさに上がったり、下がったりを繰り返していることがわかる。変動の幅や時期などに違いはあるものの、海外株式や為替等も同じこと。

退職金が危ない!一瞬で消失する人続出、ゆとりある老後に必要な月35万をどう確保?の画像2

リーマン・ショックの前に投資を始めてしまった人は?

 わかりやすい例を挙げると、退職金を投資して大きく目減りさせた人が続出したのは、2007~08年頃に退職し、投資を始めた人かもしれない。

 07年12月末の日経平均株価の終値は1万5,307円。この年は、一時的に1万8,000円台をつけるなど、投資をしてみたいというご相談も少なくなかった。

 ところが、08年9月15日(月)、アメリカの投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻。その後に続く世界的金融危機となる、いわゆるリーマン・ショックが起きた。

 日経平均株価も例外ではなく、1万2,214円だった前週末9月12日(金)の終値が、10月下旬には一時6,000円台にまで下落。為す術もなく、あっという間に株価は暴落し、1982年10月以来26年ぶりの安値を記録した。

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

 1969年富山県富山市生まれ。立命館大学法学部卒業後、1992年、株式会社日本総合研究所に入社。在職中に、FP資格を取得し、1997年同社退社。翌年、独立系FPとして転身を図る。2009年末に乳がん告知を受け、自らの体験から、がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「おさいふリング」のファシリテーター、NPO法人キャンサーネットジャパン・アドバイザリーボード(外部評価委員会)メンバー、NPO法人がんと暮らしを考える会理事なども務める。著書に「がんとお金の本」、「がんとわたしノート」(Bkc)、「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)、「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)、「入院・介護「はじめて」ガイド」(主婦の友社)(共同監修)など。近著は「親の介護とお金が心配です」(主婦の友社)(監修)(6月21日発売)
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