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黒田尚子「『足るを知る』のマネー学」

退職金が危ない!一瞬で消失する人続出、ゆとりある老後に必要な月35万をどう確保?

文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー

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 ちなみに、ゆとりのある上乗せ額は、07年以降、減少傾向にある。将来に対する先行きの不透明感を反映してか、最低かかる分との合計額は、平成3年以降で最低額だ。

 一方、収入面はどうだろう。

 世帯主が60歳以上の無職世帯(2人以上)の実収入は、20.7万円となっている(総務省「家計調査(2014年)」)。

 そこで仮に、毎月の生活費(支出)が25万円、収入が20万円だとすると、差額5万円を毎月取り崩して使う計算だ。その総額は60歳から85歳までで、5万円×12ヵ月×25年間=1,500万円、90歳までなら1,800万円となる。

 たとえば、退職金を含めたリタイア時の総資産が3,000万円だった場合、(1)と(2)として、それぞれ500万円ずつ、残りが(3)のためのお金で、2,000万円となる。

 これに、先ほど計算した生活費1,500~1,800万円を差し引くと、300~500万円が投資に回せるお金と考えられる。

退職金の運用は、少額から中長期にわたって分散投資を

 勘違いしないでいただきたいのは、「投資可能額=なくなってしまってもよいお金」ではない。よく「投資をする場合は、万が一、減ってしまっても大丈夫な範囲内で」というアドバイスをする人もいるが、大切な老後資金に減っても良い分など皆無だ。

 これは、その人のリスク許容度に合わせて投資できる上限額と肝に銘じておこう。

 なお、リタイア時の総資産の合計額が、(1)~(3)を下回った場合は、不足分を大きく殖やそうと思わずに、まず家計のリストラを図るべきである。そして、金融商品を選ぶ際には、具体的に予想利回りを何%に設定したいのかを十分に考えよう。

 とにかく、リタイア後は退職金を手にしても、焦らず、1年くらいをかけてじっくり投資先を探すこと。

 メガバンクや地銀、信金などの多くは、退職者に限定した「退職金専用定期預金」を取り扱っている。退職金の受け取り後、3ヵ月から1年以内、最低預入金額500万円以上などが条件。金利は、今年2月から導入されたマイナス金利の影響で、1.5~2%程度と引き下げられているものの、それでも普通預金の100倍以上である。

 ただし、期間が1~3ヵ月程度の短期となっているので、多少面倒でも、複数行預け替えれば、1年程度は安全で高金利の恩恵を享受しながら、投資先を吟味できる。

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

 1969年富山県富山市生まれ。立命館大学法学部卒業後、1992年、株式会社日本総合研究所に入社。在職中に、FP資格を取得し、1997年同社退社。翌年、独立系FPとして転身を図る。2009年末に乳がん告知を受け、自らの体験から、がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「おさいふリング」のファシリテーター、NPO法人キャンサーネットジャパン・アドバイザリーボード(外部評価委員会)メンバー、NPO法人がんと暮らしを考える会理事なども務める。著書に「がんとお金の本」、「がんとわたしノート」(Bkc)、「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)、「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)、「入院・介護「はじめて」ガイド」(主婦の友社)(共同監修)など。近著は「親の介護とお金が心配です」(主婦の友社)(監修)(6月21日発売)
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