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平野雅章「FP相談1600件でわかった全体最適マネー術」

住宅ローンは今、固定金利が大幅に下がって有利に…変動金利を選ぶ合理性なし

文=平野雅章/横浜FP事務所代表、CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
住宅ローンは今、固定金利が大幅に下がって有利に…変動金利を選ぶ合理性なしの画像1「Thinkstock」より

 私はファイナンシャルプランナーとして、個人顧客から住宅ローンについて毎日のように相談されている。住宅ローンについてもっとも多い顧客からの質問のひとつは、「変動金利と固定金利はどちらがよいですか?」である。

 この質問に対する私の基本的な回答は、「自分たちの家計にとって借りる額が多めであれば固定金利型を中心に検討し、少なめで余裕があれば毎月返済額が増えても対応できるので、変動金利型でも問題ありません」というものだ。

 だが、現在(2017年2月時点)は借りる額が多めでも少なめでも、全期間固定金利型や固定期間が長い固定金利選択型(当初の一定期間の金利を固定できるタイプ)を中心にお客様に検討してもらうことが多い。

マイナス金利政策の採用後に下がったのは固定金利型

 16年1月に日本銀行がマイナス金利政策の採用を発表した後、住宅ローン金利は目に見えて低下した。この半年で多少の上昇はあったものの、まだ史上最低レベルといってよいだろう。ここまではこの記事を読んでいる人の多くが認識しているかもしれないが、注目すべきなのは、変動金利型と固定金利型が同じように下がったわけではないという点だ。

 住宅ローンに強みを持つ三井住友信託銀行の15年12月と17年2月の金利を比較してみよう。同行の変動金利型は15年12月で0.625%、17年2月で0.6%である。一方、固定金利選択型30年は15年12月で1.50%、17年2月で1.05%である。前者の差0.025%に対し、後者の差は0.45%と、固定金利選択型30年の低下幅が圧倒的に大きいことがわかる。

※上記の金利は、審査により店頭表示金利からもっとも引き下げ幅が大きかった場合の適用金利である。

変動金利型と固定金利型の金利差は大幅に縮小した

 8年前までさかのぼってみると、09年2月の変動金利型(都市銀行の最優遇時の適用金利)は1.275~1.475%であった。一方、民間金融機関と住宅金融支援機構の提携により、提供される全期間固定金利型の住宅ローン「フラット35」の最低金利は3.02%と、変動金利型との差は1.545~1.745%もあった。それが17年2月では、変動金利型(都市銀行の最優遇時の適用金利)0.625%、「フラット35」(最低金利)が1.10%とその差はわずか0.475%にすぎない。つまり、現在は変動金利型と固定金利型の金利差が著しく縮小している状況であり、固定金利型を借りるには相対的に見て有利な時期といえる。

返済期間を短くできるならば固定金利選択型10年も

 それでは、私がすべての顧客に全期間固定金利型あるいは固定金利選択型30年を勧めているかというと、そうではない。

 たとえば、三菱東京UFJ銀行と三井住友信託は17年2月の固定金利選択型10年で当初の10年間の金利を0.5%としている。固定金利選択型は固定期間終了後に金利引き下げ幅が縮小するタイプも多く、この2つも11年目から金利がかなり高くなる可能性がある。しかし、共稼ぎ夫婦などかなりの繰り上げ返済が見込め短い期間で返済が終了できる世帯であれば、11年目からの利息増加の影響は相対的に小さくなるため、より長期の固定金利選択型よりも総返済額では少なくなる可能性も高くなる。つまり、返済終了までの見込み期間によっては10年固定なども私はお勧めしている。

 現在の金利状況では、今後もほとんど金利が上昇しないというシミュレーションをしない限り、少なくとも変動金利を選ぶ合理性は見つからない。住宅ローンの金利タイプを選ぶとき、あなたは金利が上昇する可能性を排除するだろうか。
(文=平野雅章/横浜FP事務所代表、CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士)

平野雅章/横浜FP事務所代表、CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士

平野雅章/横浜FP事務所代表、CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士

お金の不安を相談で解消する相談専門ファイナンシャルプランナーとして、保険・住宅ローン・ライフプランを中心に相談4000件超の実績。家計分析ツール「生活費ポートフォリオ©分析」考案、短大の非常勤講師、執筆など活動は多岐に渡る。全国FP相談協会 代表理事も務める。
横浜FP事務所

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