――資産の運用方法を金融機関に相談するというのは、金融機関にとってはカモがネギを背負って来るようなものですね。相談先として、独立系のファイナンシャルプランナーはどうなのでしょうか?
荻原 金融機関の窓口に出向いて「老後の資金を運用したいのですが、何に投資すればいいのですか?」などと聞くのは、カモがネギを背負って鍋に飛び込むようなものだと思います。
相談するなら、常に1億円以上の自己資金を運用しているような人がいいでしょう。そういう人はさまざまな経験をしているので、現実的なアドバイスを提供してくれると思います。
――荻原さん自身は、どのように資産運用をされていますか。
荻原 「投資なんか、おやめなさい」というのは、実体験に基づいて書いています。かつて、3戸のマンションに投資して損失を出した経験があります。また、昔から相当数の株式を運用しています。
ただ、不動産投資も株式投資も他人に勧めたことは一度もありません。株については、投資信託よりはましだということは言っていますが、そもそも投資は競馬や競輪と同じギャンブルなのに、なぜか別扱いされています。40年近く身銭を切ってさまざまな投資を経験してきましたが、投資はギャンブルだと思います。
――会社員の場合、投資に走ってしまうと、勤務中なのに運用額の変動が気になって仕事に集中できなくなるといったことも増えると思います。
荻原 現役で仕事をしている人が投資をやろうとすれば、多忙な合間を縫って相当な勉強をしなければなりません。たとえば、金融機関の営業担当者が「ドル・コスト平均法」によるリスクヘッジをアピールしてきたら、「なに寝ぼけたことを!」と論破できるぐらいの知識を身につけないと、いいカモになって損させられてしまいます。しかし、専門的な知識が多数必要な金融商品について勉強するのは、実際のところ大変だと思います。
――「投資をしない人は金融リテラシーが低くて時代遅れである」という趣旨で、政府と金融界が庶民を煽り続けています。しかし、現役で仕事をしながら金融商品の勉強をするのは大変ですね。
荻原 それなら、投資をしなければいいのです。投資をしなければ、損をすることもありません。大変な思いをして勉強する必要もありません。投資をするのであれば、金融機関のカモにならないように勉強すればいいのです。
それなのに、庶民の貯金を吐き出させようとする金融庁と金融機関によって、多くの日本人が投資をしなければいけないかのように思い込まされてしまっていることが問題です。何よりも大切なのは「投資をしなければいけない」という呪縛から脱することです。
今、日本の企業の財務状況がピカピカなのは、バブル崩壊以降は株や不動産などの変な投資をやめ、借金を減らして現金を増やしてきたから。個人の家計も、これを見習うべきでしょう。
――ありがとうございました。
(構成=小野貴史/経済ジャーナリスト)
『投資なんか、おやめなさい』 「老後のためには投資が必要」なんて大間違い。「何に投資すれば?」と窓口で訊くなんて愚の骨頂。銀行も、生命保険会社も証券会社も、いま生き残りをかけて私たちのお金を狙っている。個人年金、純金積立、マンション投資、毎月分配型投資信託……あらゆる投資商品でカモの争奪戦を繰り広げているのだ。2018年、20年に高い確率で到来する大不況にどう立ち向かえばいいか。リスクと不安を抱えないための資金防衛術。