飲食業者に膨大な負担

 厚労省も導入に際して「基準A」と「基準B」とに分けて、一定規模以上の事業者とと畜場、食鳥処理場は、本来のHACCPを適用し、それ以外の事業者は基準Bとして、事業者団体が作成した手引書を参考にそれぞれの事業者が衛生管理計画を策定して、管理を行うこととした。

 しかし、それでもハードルは高い。事業者は衛生管理の記録を残さなければならないのである。大津市はHACCP導入の取り組みについて、「大津市におけるHACCP導入推進事業の取り組み状況」で次のように定めている。

「記録等の面では選定されたいずれの事業者においても一般衛生管理の立て直しから着手する必要があった。これは中小規模の事業者の多くが記録の後に文書化して証憑を残す点において、同様の問題を抱えていることが想定される」
「制度化に際して必要となる文書の整理等については事業者が単独での整備を進めることは困難である」

 圧倒的多数の飲食業者が人手不足で経営難に直面しているなかで、さらにHACCP導入による衛生管理の記録とその文書化と保存の手間暇がどれほどの負担になるのか、厚労省は考慮しているのか疑問である。

HACCP“ビジネス”

 さらに問題なのは、このHACCPの義務化をビジネスチャンスとして捉えているゼネコンや厨房メーカーや電力・ガス会社、コンサルティング会社の動向である。

「『HACCP』は世界的に認められている食品の安全性を確保するための衛生管理手法の一つです。厚生労働省でもこの手法の実践を推奨しています。操作性に優れた電化厨房は、HACCPを実践する重要なポイントである調理工程における温度・湿度・時間のコントロールが容易なため、衛生的で快適な作業環境を実現します」(東北電力)

「HACCP対応の衛生的な厨房。ドライ厨房システムで厨房内をいつも清潔に」(北海道ガス)

「食品関連施設を建設、運用するにあたり今日では必須ともいえるほど重要となってきたHACCPへの対応。HACCPで大切なことは、ハードとソフトの両立だと前田建設は考えます。前田建設は、これまで培った豊富な実績をもとに、お客様のHACCP導入をトータルでサポートいたします」(前田建設)

 これらは、HACCPを名目に厨房システムなどを売り込む企業の宣伝です。価格も半端ではない。日立グループのある企業では、「キッチン安・心・食」と銘打ってHACCP対応のシステムを198万円で売り込む。また、コンサルタントもHACCP認証を売り込んでいるが、小規模レストランで認証までのコンサルタント費用が月10万円。認証登録費が年10万円、フォローアップコンサルタント料が月5万円となっている。

 以上みてきたようなHACCPに対応できる飲食店はいいが、とても対応できない零細の飲食店などは、店を畳む事態に追い込まれかねない。この問題は、国会で徹底的に審議されるべきである。
(文=小倉正行/フリーライター)

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