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インフルエンザに治療薬はない?通院でかえって感染拡大や免疫力低下の恐れも

文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士
インフルエンザに治療薬はない?通院でかえって感染拡大や免疫力低下の恐れもの画像1「Thinkstock」より

 相変わらず猛威をふるっているインフルエンザ。今回は「インフルエンザの特効薬」といわれている「タミフル」についてお話します。

 いきなりですが、インフルエンザに治療薬はありません。抗インフルエンザ薬といわれている薬としては、内服薬のタミフル、吸入薬のリレンザとイナビル、入院を必要とする患者さん向けの点滴薬のラピアクタがあります。ほかにA型インフルエンザにはパーキンソン病などの治療に使われるシンメトレルという薬が処方されることもあります。

 なんとか抗インフルエンザ薬を手に入れようと、つらい体をおして病院に行くのは、タミフルやリレンザでインフルエンザが治ると思っている方が多いからでしょう。

 世界中のタミフルの70%以上が日本で消費されているともいわれるくらい、日本人はタミフルをスペシャルな薬と捉えているようです。欧米では、ハイリスクの患者さん以外、タミフルを服用することはあまりないようです。インフルエンザに対する恐怖心も日本人ほど持っていないようです。

 日本人がインフルエンザの特効薬だと思っているタミフルもインフルエンザウイルスを退治することはできません。できるのは「ウイルスをこれ以上、増殖させない」ということです。

 インフルエンザウイルスは発症後48時間後に体内での増殖がピークになるといわれています。ですから、48時間以内にタミフルを飲めば効果がある、というわけです。発症してからだいぶ経ってから受診して「タミフルを出してもらえなかった」という方もいると思いますが、これは、「今からタミフルを飲んでも、もうウイルスはピークを過ぎていて意味がない」という理由なのです。

無理に病院に行かずに安静にするべき

 一方で、発症から48時間たっていないからといって、なんとか病院に行ってタミフルをもらおうとする方もいます。しかし、その効果についてはよく考えたいところです。

 発症から時間の経過とともにウイルス数は段々増えてピークに近づいていきます。発症とは、「ゾクッときた」「発熱」など、自覚症状が出た時点と考えてください。体力を温存し免疫力を発揮して、ウイルスと闘いたいところですが、かなり増えてしまったウイルスの増殖を食い止めるべく、満員電車に揺られ病院に行って、混んでいる待合室で待たされ……、どれだけ体力を消耗してしまうでしょうか。つらい体をおしてでも病院へ行って薬をもらうか、家でゆっくり寝て治すか、どちらがいいのでしょうか。ここは冷静に考えてください。

 とはいえ、学校に通っているお子さんであれば、インフルエンザに罹ったという証明書がないと欠席扱いになってしますし、病院に行かずにひたすら安静にしているということは現実には難しいものです。

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

薬剤師として20年間医療の現場に身を置く中で、薬漬けの治療法に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」を目指す。現在は、自らの経験と栄養学・運動生理学などの豊富な知識を生かし、感じて食べる「感食」、楽しく歩く「ハッピーウォーク」を中心に、薬に頼らない健康法を多くの人々に伝えている。『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)、『薬が病気をつくる』(あさ出版)、『日本人はなぜ、「薬」を飲み過ぎるのか?』(ベストセラーズ)、『薬剤師は抗がん剤を使わない』(廣済堂出版)など著書多数。最新刊は3月23日出版の『それでも「コレステロール薬」を飲みますか?』(河出書房新社)。

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