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フジ『絶対零度』血しぶき舞う凄惨シーンが衝撃的…圧巻の演出で優れた映像表現

文=吉川織部/ドラマウォッチャー
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 連続テレビドラマ『絶対零度 未然犯罪潜入捜査』(フジテレビ系)の第5話が6日に放送され、平均視聴率は前回から1.3ポイント減の10.4%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)だったことがわかった。

 このドラマは、元公安のエリート・井沢範人(沢村一樹)率いる「未然犯罪捜査班」の活躍を描く物語。警察が極秘に開発した「未然犯罪捜査システム(ミハンシステム)」が割り出した情報に基づいて殺人事件を犯そうとしている人物を捜査し、その犯行を未然に防ぐのが彼らの任務だ。

 第5話は、テレビ朝日の刑事ドラマのような人情路線だった前回とは大きく異なり、少年犯罪をテーマにしたヘビー路線で物語が進展した。ミハンシステムが危険人物と判定したのは、高校生の岡崎直樹(道枝駿佑)。成績は優秀で部活でもエースとして活躍しており、さらに父親は文部科学省のトップに近い人物というエリートだ。だが、彼の周囲では動物の殺傷事件が相次いでおり、彼が犯人なのではないかとの疑いが強まっていた。

 捜査の結果、フリージャーナリストの川上(近藤公園)が直樹に接触していることがわかる。彼は、動物殺傷を繰り返す若者たちに会ってそれを食い止める活動をしていると主張するが、真相はその反対で、彼らの犯罪を後押ししていたのだった。

 川上から3Dプリンタ銃をもらった直樹は文部科学省に侵入し、発砲しながら庁舎内を進んでいく。騒ぎに気付いて近付いてきた父親をためらいなく撃ち殺し、「ああ、やっと殺せた」とつぶやく。駆け付けた井沢に銃を奪われると今度はカッターナイフを取り出し、勢いよく自らの首を掻き切ってその場で果てた。

「月9にはふさわしくない」と言うつもりはないが、少年が親に銃を向けて殺害しただけでも衝撃的だったのに、血しぶきを上げて自殺するという結末には、ここまでやるのか、とかなり驚かされた。もはや軽い気持ちで見られる内容ではないだけに、好き嫌いはかなり分かれそうだが、前回辺りから「いいドラマを作ろう」とする制作側の熱意は感じる。

 特に、互いにある程度手の内が相手にバレてしまった川上と井沢が、アイスコーヒーを飲みながら会話する「直接対決」のシーンは、演出も演技も最高だった。互いに弱みを握り合っている2人が、表面上はあくまで冷静に相手の出方を探り合う。証拠がないので自分は逮捕されないと確信している川上は、余裕たっぷりに勝ち誇ったような笑みを浮かべるが、井沢は今にも目の前の相手を殺すのではないかと思えるような恐ろしい顔つきで川上をじっと見据えながら、アイスコーヒーをストローですする。怒っているというより、「憤っている」、もしくは「憎悪している」と表現するほうがぴったりだ。いつもはヘラヘラしている井沢の変貌ぶりに圧倒される。井沢が持つグラスから、今にも水滴が滴ろうとするのが印象的だ。川上に「人を殺したことがありますね」と指摘された井沢は、肯定も否定もせず、ただじっと蛇のような目付きで彼を見据えるだけだった。井沢の底知れぬ闇を感じさせたこのシーンは、映像表現として抜群に優れていたと評価したい。

 さて、直樹は自死してしまったが、彼を操っていた川上は何の罪にも問われず、一連の事件を記事にして週刊誌に載せた。するとある晩、夜道を歩く川上の前に何者かが現れ、彼を銃で撃って殺害した。第2話と第3話で描かれた「仕事人」的な謎の人物の存在が再び示唆されたわけだ。第6話はその人物の正体に迫る回になるようだが、それはさておくとしても、今回の第5話はドラマ全体において意味深い回だったといえる。

 なぜなら、ミハンシステムは実行犯を予測することはできるが、それを陰で操る人物や、証拠を残さずに犯罪を犯す人物など、より悪質な犯罪者を察知できないことが描かれたからだ。だとすれば、井沢率いるミハンチームによる人力での捜査の必要性が相対的に増すことになる。そしておそらく、そうした本当に悪質な犯罪者は、今回の川上がそうだったように、法で裁くことが難しいことが予想される。となれば、ミハンチームの誰かが、あるいはチームそのものが、法で裁けない悪を私的に裁く存在と化してもおかしくはない。何やらバッドエンドの香りも漂うが、果たしてミハンチームの中に「仕事人」はいるのか、チーム自体が闇落ちする展開はあるのか、目が離せなくなってきた。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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