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理央周「マーケティングアイズ」

レゴランドの値下げは、値下げではない…「家族で何度も来やすくなる」緻密な戦略

文=理央 周/マーケティングアイズ代表取締役、売れる仕組み研究所所長

「値決めは経営」という稲盛和夫氏の言葉にあるように、価格を設定する際には多様な要素を複雑にからみ合わせて考える。USJにおいては数学マーケティングの手法を導入しているし、顧客がどれだけ価格の振れ幅に対して敏感に反応するかを調査するPSM分析という手法もある。これらに、競合状況を考えて固定費と変動費、初期投資の減価償却や回収年数などを鑑みて決定する。すなわち、すべての経営資源をどのように活用して収益を好転させるかという経営の目的に、もっとも近いところにあるのが値決めなのだ。

価格ではなく価値が、顧客の判断基準

 エンタテイメントパークは、初年度は話題性があるので来園者も多いが、2年目から減ることが多い。ここで大事なことは、やはり顧客がロイヤルティーを持ってリピート来場してくれることだ。そのために今回のファミリー価格の設定は、一つの手法として功を奏するかもしれない。

 ただ単に「安くした」という価格訴求だけでは、「安い価格が好きな顧客層」が集まり、他に安い価格のテーマパークができれば、そちらに流れてしまう。まずは明確な事業コンセプトを打ち出すことが必須となる。

 東京ディズニーリゾートはゴミ一つ落ちていなく、園内から外の建物は見えない、ミッキーは私たちの心の中に1人しかいないという「夢の世界」がコンセプトだし、USJは映画を軸にしたエンタテイメントがコンセプトであり、どちらもわかりやすい。コンセプトが明確だと、顧客に自社が提供したい価値も伝わり、価格ではなくその価値が顧客の来園決定時の判断基準になるのだ。

 レゴランドのコンセプトは、やはり知育玩具で学びながら遊べることだろう。私も息子や娘が小さい時に、レゴを使い「自分で工夫して」一から何かを組み立てることで想像力と創造力の両方が育まれると感じていた。それがパークで体験できるのだから、素晴らしい。レゴランドも既存のアトラクションで楽しむだけでなく、「工夫する」「つくり出す」といった楽しみを家族で体験できることが顧客価値であり、事業コンセプトなのだ。これはとても独自性が高く、他のパークとはっきり差別化できる。

 私の地元・名古屋にできたレゴランド。今回の価格改定でさらなる飛躍をしてもらいたい。
(文=理央 周/マーケティングアイズ代表取締役、売れる仕組み研究所所長)

●理央 周(りおう めぐる、本名:児玉 洋典)
マーケティング・コンサルタント、企業研修講師。1962年生まれ。静岡大学人文学部卒。フィリップモリスなどを経て、インディアナ大学経営大学院にてMBAを取得。アマゾンジャパン株式会社、マスターカードなどで、マーケティング・マネージャーを歴任。2010年に起業。収益を好転させる中堅企業向けコンサルティングと、従業員をお客様目線に変える社員研修、経営講座を提供。2013年より関西学院大学経営戦略研究科准教授として教鞭をとる。著書は『「なぜか売れる」の公式』(日本経済新聞出版社)、『仕事の速い人が絶対やらない時間の使い方』(日本実業出版社)など。商工会議所や経営者会での講演、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌への出演、寄稿も多数。
【HP】http://www.businessjin.com/

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