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「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

日本と北朝鮮が極秘会談…拉致被害者の返還を直接交渉、安倍首相の電撃訪朝の可能性も

文=相馬勝/ジャーナリスト

 統一戦線部はCIA(米国中央情報局)とともに、米朝首脳会談への事前交渉を主導した工作機関であり、同部トップの部長はポンぺオ米国務長官のカウンターパートである金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長であることから考えると、金聖恵氏は同部ナンバー2の実務責任者で、金正恩氏の妹の金与正・党副部長の側近ともされる。

 金聖恵氏の対外的肩書は党中央員会室長だが、裏の肩書が統一戦線部策略室長であり、2013年には祖国平和統一委員会書記局部長という肩書で紹介されるなど、これまでは主に対韓、統一部門を担当してきたが、ここにきて対米、対日部門にも責任分野が拡大したとみてよさそうだ。

 いずれにしても、金正恩指導部を支える有力幹部といえ、北朝鮮の女性指導者としては、金氏の妻の李雪主氏、金与正氏、外務官僚としては崔善姫・外務次官とならんで4本柱の一角を占めているといえそうだ。

秘密接触が今も継続中か

 それでは、北村・金接触を受けて日朝関係はどうなるのか。両者がベトナムで接触したのが7月14日午後から17日午前の間だったとみられる。というのも、北村氏はほぼ毎日、官邸などで安倍首相と会っているが、この期間は安倍首相とは接触していないからだ。ちなみに、北村氏は17日午後に官邸で安倍首相と会っている。時事通信の首相動静では次のようになっている。

「午後2時45分、谷内正太郎国家安全保障局長、北村滋内閣情報官、浦田啓一公安調査庁次長が入った。同56分、谷内、浦田両氏が出た。同3時25分、北村氏が出た」

 日本の重要な情報関係者3人が雁首をそろえて、安倍首相に会いに行っているのだから、よほど重要な案件であることは間違いない。つまり、北村氏が上司に当たる谷内氏、部下の浦田氏とともに、北村氏の対北接触の報告を行ったとみることができる。

 その後、8月10日に観光ツアーで北京から空路で平壌入りした日本人男性が北朝鮮の秘密警察組織である国家保衛省要員に拘束されたが、その2週間後に電撃的に釈放されている。わずか2週間で釈放というのはこれまでで最短期間だ。以前には日本人男性が2年間も拘束されていたこともあっただけに、極めて異例の措置といえる。

 なぜ釈放されたのかを考えると、日朝の秘密接触が今も継続中であり、北朝鮮が「日本側を刺激するとまずい」という判断を下したとの推論が成り立つ。そう考えると、日朝交渉は水面下で続いており、ある日突然「安倍首相の電撃訪朝」というニュースが飛び込んでくるかもしれない。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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