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RIZAP、会計マジック・利益かさ上げ経営の実像…赤字企業を次々買収の目的

文=編集部
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RIZAP、会計マジック・利益かさ上げ経営の実像…赤字企業を次々買収の目的の画像1ライザップ(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

「プロ経営者」松本晃最高執行責任者(COO)によるRIZAPグループの経営体質の改造が始まった。

 RIZAPは個人向けトレーニングジムを運営しているが、M&A(合併・買収)の連発がたたり、会社の財務体質はメタボリックシンドロームの様相を呈している。松本COOは、グループのスリム化に取り組む。

 RIZAPグループの2018年4~6月期の連結決算(国際財務報告基準)は、売上高に当たる売上収益は前年同期比82.1%増の521億円。これに対して営業損益は37億円の赤字(前年同期は27億円の黒字)、四半期の最終損益は30億円の赤字(同21億円の黒字)に転落した。営業損益段階で前年同期比マイナス64億円という大幅な悪化となった。

 第1四半期の赤字の主因は、先行投資の負担増にある。マーケティング費用が前年同期比で19億円、新規出店や事業拡大に伴う費用が同10億円、その他の先行投資や構造改革費用などが同11億円と、合計40億円の負担増があり、利益を押し下げた。

 第1四半期だけで、インテリア雑貨店HAPiNS(旧パスポート、8月に社名変更)を中心に44店舗を新規出店。正社員も4~6月だけで600人増加した。

「たくさん買収した子会社には、当然ながらまだまだ改善の余地がある。大きく可能性のある会社を伸ばすのと、どうしようもない会社の赤字を止めるのが私の仕事」

8月13日、都内で開いた決算説明会で松本COOはこう説明した。瀬戸健社長兼最高経営責任者(CEO)は「松本氏の発言は子会社の売却を意味する」と、M&A一辺倒の路線の転換を示唆した。

 松本氏は米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)日本法人の社長などを経て、2009年からカルビーの会長兼CEOを務め、カルビーを高収益企業に変身させた。今年6月、カルビーのCEOを退任し、RIZAPグループの創業者である瀬戸氏が同月、三顧の礼をもって新設したCOOに迎えた。

 多数のオファーの中から松本氏がRIZAPグループを選んだのは、息子ほどの年の差がある瀬戸氏を「一流の経済人に育てる」ことを使命としたからだという。

経営不振企業ばかり買収した理由

 松本氏は、RIZAPグループの構造的欠陥をすぐに見抜いた。瀬戸氏が「18年度は月に1件のM&Aをする」と豪語していたM&A路線に急ブレーキをかけた。

 凄まじい勢いで進めてきたM&AがRIZAPグループを表面上、急成長させたのは紛れもない事実だ。12年3月期に8社だったグループ会社は、いまや75社を数える。

 このうち18年3月に子会社にしたワンダーコーポレーションを含め、上場企業の買収は9社に上る。マルコ、ぱど、夢展望、ジーンズメイト、堀田丸正、イデアインターナショナル、HAPiNS、SDエンターテイメント――。しかし、これらはいずれも経営不振企業だ。

 なぜ、経営不振企業ばかり買収してきたのか。キーワードは「のれん代」だ。のれん代とは、企業の買収で支払った金額と買収先の純資産の差額をいう。

 RIZAPが採用している国際財務報告基準では、実際の市場価格より高く買収した場合には、4年目の決算の期首に資産価値を見直し、収益が上がっていなければ減損処理をしなければならない。安く買収した場合は、“負ののれん代”として一括して利益を計上できる。RIZAPグループは、負ののれん代によって利益をかさ上げしてきた。

 17年3月期の全社の営業利益は102億円。このうちM&Aによる割安購入益が59億円。営業利益の58%にあたる。18年同期は営業利益136億円のうち割安購入益は74億円。全体の営業利益の54%を占める。負ののれん代が利益をもたらすという会計マジックを使ってきたわけだ。

 一時的に会計上、利益は出る。問題は、経営不振企業をピカピカに生まれ変わらせることができるかどうかにかかってくる。買収した企業が沈みっぱなしではRIZAPグループの業績の足を引っ張ることになる。

 買収した企業が赤字を続けるなかで、利益を上げるための方法はひとつしかない。経営不振企業を買収し続け、割安購入益を捻出することだ。典型的な自転車操業といえる。

 RIZAPグループが上場しているのは、札幌証券取引所の新興市場、アンビシャスだ。6月に開いたRIZAPグループの株主総会では、株主から「いつ東京証券取引所1部に上場するのか」という質問が挙がったという。

 実は、これまで何度か東証に上場を申請したが、いずれも審査は通っていない。アナリストは「赤字会社を買収して利益を出す収益構造が不透明とみなされたからだろう」と分析する。

 松本氏は、こうしたいびつな収益構造にメスを入れる。経営不振企業ばかりを買収するM&A路線と決別し、買収した赤字企業の再生に力を注ぐ。東証上場は、健全な財務体質に生まれ変わってからでなければ、あり得ない。

 19年3月期通期の見通しは従来の予想を据え置いた。売上高は18年同期比83.6%増の2500億円、営業利益は69.2%増の230億円、純利益は72.3%増の159億円を予想している。第1四半期が30億円の赤字で、この業績を達成できるのかは不透明だ。「松本改革が進むにつれて、業績予想を下方修正する可能性がある」(前出のアナリスト)との見方が多い。

 RIZAPグループは6月、公募増資で発行済株数の8%に相当する2027万株を発行すると同時に、303万株のオーバーアロットメントによる追加売り出しを実施した。そして7月末には1株を2株に分割。株価の刺激策を取った。この時には株式分割は「東証上場への布石」との前向きな見方もあった。

 4~6月期決算の赤字転落を受けてRIZAPグループの株価は8月14日、一時、年初来安値となる620円まで下落した。株式分割後の修正値による年初来高値は1月30日の1099円。修正前の株価だと2198円に相当する。17年11月24日には3090円の高値をつけていたのに比べると、極端に下落しているのがわかる。

 M&A路線の軌道修正に対して投資家は戸惑いを隠せない。株価は、この動揺ぶりを如実に示している。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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