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「寿司がおいしくなかった」かっぱ寿司、おいしくなった途端に客数増

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
「寿司がおいしくなかった」かっぱ寿司、おいしくなった途端に客数増の画像1かっぱ寿司の店舗(写真:アフロ)

 かっぱ寿司が復調の兆しを見せている。運営会社のカッパ・クリエイトは9月3日、8月の既存店売上高が前年同月比2.0%増だったと発表した。

 7月こそ、西日本を襲った記録的な豪雨や台風、記録的な猛暑といった天候不順で客足が鈍り、売上高は1.8%減と減収だったが、6月は7.0%増、5月は2.0%増と2カ月連続で増収を達成している。ちなみに、4月は1.2%減の減収。2019年3月期に入ってからの5カ月間(18年4〜8月)の売上高は、3勝2敗と勝ち越している。

 それまでは、厳しい状況が続いていた。「かっぱ寿司のすしはおいしくない」という認識が定着し、客離れが起きていた。客数は18年3月期が前年比7.8%減、17年3月期が6.5%減、16年3月期が5.5%減、15年3月期が7.8%減と4年連続で前年割れを起こしていた。

 カッパ・クリエイトは厳しい経営を余儀なくされてきた。14年に外食大手コロワイドの傘下に入り経営の立て直しを進めてきたが、状況が大きく改善することはなかった。13年2月期に941億円あった連結売上高は、18年3月期には16%少ない787億円にまで減った。また、変則決算があるが、この6期で3度も最終赤字を計上している。「カッパなのに沈んだ」と揶揄されることもあった。

 ただ、売上高は18年3月期まで5期連続で減収(15年3月期のみ13カ月決算)になってはいるものの、18年3月期は前年比0.9%減と微減にとどまったほか、最終損益が8億円の黒字(前年は58億円の赤字)になるなど、経営改革は着実に実を結びつつある。

 客足は戻りつつあるようだ。今年6月の客数は、32カ月ぶりに前年同月を上回った。とはいえ、それ以外の月は前年を下回っているのだが、ただ今期(19年3月期)に入ってからは、客数の減少幅が小さくなっている。そして先述したとおり、月別の既存店売上高が3勝2敗と勝ち越しており、今後のV字回復が期待できる状況になりつつある。

格段においしくなった

 なぜ客足は戻りつつあるのか。まず、すしがおいしくなったことが挙げられるだろう。

 筆者の個人的な感想になってしまうが、今のかっぱ寿司のすしは十数年ほど前と比べて圧倒的においしくなっている。十数年ほど前にかっぱ寿司のとある店舗ですしを食べた時に衝撃的な味を体験し、それ以降、かっぱ寿司ですしを食べることはなかったのだが、一昨年、取材のため久しぶりに食べてみたところ、すしが格段においしくなっていたことに驚きを隠せなかった。

 味の良し悪しは主観的要素が強いため一概には言えないが、筆者と同じような体験、感想を持つ人は少なくないのではないか。もちろん、現在まで長らく食べていない人や、噂を聞いてまったく食べたことがない人もいるだろう。

 いずれにしても、このような理由で一度大きな客離れが起きてしまったら、客足を回復させることは非常に難しくなる。仮においしさの面で改善ができたとしても、そのことが世間に浸透して客足が回復するにはかなりの時間が必要となるだろう。

 近年、かっぱ寿司は改革を懸命にアピールしてきた。16年10月からブランドの再構築を始め、それまでの悪いイメージを払拭するため、まずはロゴを一新し、「かっぱ」の図柄から皿を数枚重ねた図柄に変更した。

 テレビCMでも、かっぱ寿司が変わったことをアピールした。昨年7月から、女優の吹石一恵が女漁師を演じるテレビCM「やる、しかない。」シリーズの放送を始めた。漁師も認める品質のすしを提供することを宣言するというもので、「すしをおいしくしなければ客足は戻らず、業績の回復もない」という意味が込められているともとれる自虐的なテレビCMとして話題を集めた。

 今年4月からは、女優でフィギュアスケート選手の本田望結がすしを食べ続けるテレビCM「うんまい、かっぱ寿司」シリーズの放映を開始した。CMのほとんどの時間を本田望結がすしをおいしそうに食べ続けるシーンに割いており、キャンペーンや新しいすしネタを紹介するというものではなく、「かっぱ寿司のすしはおいしくなった」ことだけをアピールするかのような構成になっている。

 どちらのCMも「すしのおいしさ」にフォーカスしているのが特徴となっている。これらのCMを見て、「そこまでアピールするのなら、試しに食べてみようか」と思った人は少なくないだろう。そして実際に食べてみた人が筆者と同じように、かっぱ寿司のおいしさに気づき、リピーターとなり、客数が上向くようになったのではないか。

サイドメニューの充実

 また、客足が戻るようになったのは、サイドメニューを強化したことも大きいだろう。

 近年、大手回転ずしチェーンは、サイドメニューを強化することに躍起になっている。しかし、少し前までのかっぱ寿司は、競合他社と一線を画していた。サイドメニューを強化するよりも、まずはすしのおいしさを高めることを優先したのかもしれない。ただ、この1年ほどは、かっぱ寿司もサイドメニューの強化に動いている。

 たとえば、今年6月は32カ月ぶりに客数が前年同月を上回ったわけだが、この月はサイドメニューが充実していた印象がある。5月上旬に「白いスープカレーラーメン」を販売し、続いて6月下旬に「えびそば一幻監修 海老ラーメン」を発売した。白いスープカレーラーメンは発売3週間で10万食、海老ラーメンは発売10日間で10万食を売り上げるほど好評だったという。5月下旬からは夏季限定で「ラムネ氷パフェ」と「いちごみるく氷パフェ」を販売した。こうしたサイドメニューを目当てに来店した人が少なくなかったのではないか。

 サイドメニューを強化したほか、「食べ放題」を実施するなどして何かと話題を振りまいてきたことも大きいだろう。こうしたなりふり構わず打ち出してきた施策が徐々に成果として表れているといえそうだ。

 かっぱ寿司の既存店売上高は回復基調にある。とはいえ、まだ完全復活を遂げたとまではいえない。今期は、売上高こそ3勝2敗と勝ち越してはいるが、客数は1勝4敗と大きく負け越しているためだ。減少幅が縮まっているとはいえ、この傾向が今後も続くかは予断を許さない。完全復活を遂げるにはもう少しの努力と時間が必要だろう。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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