金融庁は10月5日、女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」をめぐる不正融資が明らかになったスルガ銀行に対し、新規の投資用不動産融資と一部の住宅ローン業務を6カ月間停止する命令を出した。
金融庁は、創業家が関係するファミリー企業への不適切な融資を指摘した。スルガ銀行は創業家のファミリー企業への融資額が488億円に上り、このうち69億円が創業家の個人に流れたと公表した。経営不振に陥ったファミリー企業を救済するため、別のファミリー企業に「寄付」のかたちで資金を流し、そこから転貸する不正が明らかになった。
金融庁は、スルガ銀行の岡野光喜前会長ら創業家による経営支配の中で取締役会や融資審査が形骸化し、経営管理に不備があったと断じた。
有國三知男社長はファミリー企業への融資の詳細の公表を、「調査中」を理由に拒んだ。だが、関係者によると、「岡野光喜前会長個人や岡野関連企業が含まれている」という。融資は「店舗取得資金」など実態と異なる名目で行われており、ファミリー企業のなかには実態のないペーパーカンパニーもあったとされる。有國社長は「融資先は管理していたが、転貸先まで把握していなかった」と釈明したが、有國社長を含む多数の役員が、これら不正融資を黙認していた可能性がある。
暴力団など反社会的勢力への融資や口座の開設も多数見つかった。カードローンの残高の増加を許容していたのが22件、反社会的勢力による新規口座の開設も46件あった。
スルガ銀行の不正を調査した第三者委員会は9月、組織的不正と認定。当事会長の岡野氏、社長の米山明広氏ら取締役5人が退任した。有國三知男社長は10月5日の記者会見で「創業家への融資について調査し、必要なら法的責任を追及する」方針を明らかにした。
岡野家の聖地は、愛鷹山麓のクレマチスの丘
スルガ銀行は岡野氏など、最大の責任者をどう裁くのか。ファミリー企業への融資488億円、創業家個人に流れた69億円をどうやって回収するのか。
スルガ銀行は1895年に岡野前会長の曽祖父にあたる岡野喜太郎氏が創業。100年以上にわたり岡野家出身者がトップを務めてきた。スルガ銀行の子会社とは別に、岡野家の関連企業(ファミリー企業)は20社以上あり、スルガ銀行はこのうち約10社と取引がある。
ファミリー企業への融資は一時、1200億円を超えていたが、金融庁の検査ののちに取引の適正化の指摘を受け、残高を減らしてきた。それでも、現時点で488億円あったということだ。スルガ銀行の融資残高(約3.2兆円)の1.5%にあたる。
ファミリー企業はスルガ銀行の株式を持つ。有価証券報告書によると、18年3月末時点の大株主上位10法人のうち4社がファミリー企業だ。4社合計で15.46%の株式を保有している。