法の精神に反する2%還元策
10月15日、安倍晋三首相は閣議で「予定通り消費税を増税する」と表明したが、今回の軽減税率制度は問題が多すぎる。そのひとつが2%の還元だ。まだ、実施は未定でその全容も明らかではないが、根本的な問題がある。
検討されている大まかな内容としては、ポイント還元の対象となる事業者はあらかじめ決められた中小小売店と中小飲食店で(小売店だけの可能性もある)、キャッシュレスで支払った消費者の分のみ。キャッシュレス対応レジシステムを導入していない事業者は対象外で、現金で支払った消費者には2%還元されない(プレミアム商品券の案も浮上している)。対象商品は消費税率10%(飲食料品以外と外食)だけでなく、8%商品(飲食料品と持ち帰り等)も含まれる可能性がある。
購入あるいは飲食した後の会計時に2%分のポイントが付くので、消費者はそのポイントを利用することができる。会計時に2%分の現金を受け取ることと同じなので、10%の消費税が実質8%、8%の消費税が実質6%になる。
この制度には大きな疑問がある。国税庁のホームページの消費税のしくみの項には、「消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して広く公平に課税される税」とある。消費税の主旨(精神)は、公平に課税するということなのだ。ところが、この2%還元策は「特別な店(中小事業者でキャッシュレスレジシステムを導入した店)で、キャッシュレスで清算した消費者だけに与えられる恩恵」なのだ。
これが公平といえるのだろうか。政府が自ら進んで法の精神に反した行為をしようとしているのだ。しかも、この還元制度をつくるのに莫大な税金が投入される。税金の無駄遣いだ。
事業者にとって本当にメリットがあるのか
対象となる中小事業者は、この還元策を導入するメリットがあるかどうか、慎重に検討すべきだ。
まず、還元されるのは消費者であって事業者ではない。キャッシュレスレジシステムを導入しても、直接的には事業者には売上も利益も一切発生しない。一方、経費はハード(レジやカードリーダー等)とソフト(ポイント及びカード決済システム)の初期費用だけでなく、カード決済のためにクレジット会社に支払う手数料、システム(ハード及びソフト)維持のための費用等のランニングコストが発生する。