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ポスト五輪の東京~2020年以降も勝つまち、負けるまち~TOKYO 2020

東京五輪開催年、インバウンド客が減少の可能性…中国依存のいびつな「観光大国」の正体

文=池田利道/東京23区研究所所長
東京五輪開催年、インバウンド客が減少の可能性…中国依存のいびつな「観光大国」の正体の画像1訪日中国人観光客の様子(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 訪日外国人観光客(以下、インバウンド客)の伸びが止まらない(図表1参照)。

東京五輪開催年、インバウンド客が減少の可能性…中国依存のいびつな「観光大国」の正体の画像2

 2015年時点で約1974万人だったインバウンド客を「2020年に4000万人に倍増させる」。この政府の目標を耳にしたとき、「また“ホラノミクス”か」と感じた人も多かったのではないだろうか。ところが、2016年には対前年比22%増。続く2017年は同19%増。2018年も1~7月の中間値で対前年同期比14%増の高水準をキープしている。仮に今後、若干ペースダウンして年率12%に落ちたとしても、2020年には4000万人を超える計算だ。

 我が国を訪れるインバウンド客が、かくも増加を続けている理由には諸説がある。世界中で国際観光需要が増加トレンドにあること。我が国のインバウンド客の主要なマーケットであるアジア諸国の経済が好調であること。格安航空会社(LCC)の利用が普及していること。円安メリットが海外客を引きつけていること。アジア諸国に対する観光ビザ発給要件の緩和が進んでいること。そして、オリンピック効果だ。

 実際はこれら諸要因の合わせ技なのだろうが、それを差し引いても、五輪がインバウンド需要の増加に大きな影響をもたらしていることはデータからも確認できる。国連世界観光機関(UNWTO)のデータによると、2008年から東京五輪の開催が決まった2013年までの5年間で、世界の国際観光需要は17%増加した。我が国の実績は24%増で、世界平均を上回ってはいたものの、突出して高いというわけではなかった。ところが、五輪開催決定後の2013~2017年の4年間では、世界の21%増に対し、我が国はなんと177%増。この差の最大の要因が「五輪効果」にあると考えて間違いないだろう。

五輪効果はバブルとなって消えていくのか

 では、五輪が終わったらどうなるのか。評価は大きく2つに分かれる。

 悲観論者は、五輪そのものにそれほど大きな国際観光集客力がないという。つまり、五輪開催による一時的な注目がインバウンド需要を高めているにすぎず、五輪後は急速に熱が冷めるというのだ。

 みずほ総合研究所の「2020東京オリンピックの経済効果」(2013年9月)では、2012年ロンドン大会の実績から、東京五輪の直接海外誘客数を約80万人と推計している。日帰り海外旅行も可能なEU圏内にあり、さらにアメリカと言葉の壁がないロンドン大会のデータを準用することには疑問も感じるが、それでもわずか80万人。4000万人の2%にすぎない。

 もちろん、五輪の直接的効果は開催される17日間(パラリンピック期間を除く)に集中する。その当然の結果として、五輪期間中は混むし、何かと値段も高くなる。そうなると、五輪に直接興味のない98%の人たちは敬遠志向が働く。実際、近年は多くの国で五輪開催年、少なくとも五輪開催期間中はインバウンド客が減少する傾向にあるという。

 これに対して楽観論者は、グローバルな国際観光需要の伸びに支えられ、五輪後はどの国でも外国人客が再度増加に転じているというデータを挙げる。

ポスト五輪がインバウンド客に与える影響は?

 観光庁の「過去のオリンピック・パラリンピックにおける観光の状況」を見ると、2000年代に入って開催されたシドニー、アテネ、北京の3大会は、程度の差こそあれ同じような傾向を示している。開催決定後に急増したインバウンド客は、五輪前後に腰折れした後、再び増加に転じている。だが、五輪後の勢いは過去のトレンドと同じレベルに戻る。一方、ロンドンは開催決定~開催までの間はそれほど大きく伸びなかったが、五輪後にインバウンド客が急増している。

池田利道/東京23区研究所所長

池田利道/東京23区研究所所長

東京大学都市工学科大学院修士修了。(財)東京都政調査会で東京の都市計画に携わった後、㈱マイカル総合研究所主席研究員として商業主導型まちづくりの企画・事業化に従事。その後、まちづくりコンサルタント会社の主宰を経て現職。
一般社団法人 東京23区研究所

『なぜか惹かれる足立区~東京23区「最下位」からの下剋上~』 治安が悪い、学力が低い、ヤンキーが多い……など、何かとマイナスイメージを持たれやすい足立区。しかし近年は家賃のお手傾感や物価の安さが注目を浴び、「穴場」としてテレビ番組に取り上げられることが多く、再開発の進む北千住は「住みたい街ランキング」の上位に浮上。一体足立に何が起きているのか? 人々は足立のどこに惹かれているのか? 23区研究のパイオニアで、ベストセラーとなった『23区格差』の著者があらゆるデータを用いて徹底分析してみたら、足立に東京の未来を読み解くヒントが隠されていた! amazon_associate_logo.jpg

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